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12条点検の対象外なら定期調査は不要? ~自主検査の必要性も解説~

2023/09/08

12条点検は不特定多数の人が利用する建築物や設備に対して行な定期検査ですが、12条点検の対象外である建築物や設備でも、安全性を確保するために定期検査は欠かせません。建築物や設備の安全性を確保し、建築物等の利用者が安心して建物を利用できるようにするためにも、定期的に検査を実施しましょう。

本記事では、12条点検の概要と検査の対象となる建築物や設備について詳しく解説します。12条点検の対象となっている建築物や設備を所有または管理している方や、12条点検の対象外であっても定期的な検査を実施したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

12条点検とは?

デパートや娯楽施設、ホテル、病院などの不特定多数の人が利用する施設では、建物の老朽化や避難設備の不備、建築設備の作動不良などから、思わぬ大事故が発生する危険性があり、建築物の利用者の安全を確保するために実施するのが、建築基準法第12条に定められている「12条点検」です。建築基準法第12条では、点検対象となる建築物・設備の所有者、管理者に対し、専門の技術者による定期的な調査・検査を実施し、特定行政庁に報告することを義務付けています。

12条点検は以下の4つの定期調査・検査で構成されています。

調査・検査によって、対象となる建築物や設備の規模、報告時期などが異なります。検査対象となっている建築物や設備を所有または管理している方は、検査の概要を知り、検査が適切に実施できるよう準備しておきましょう。

関連記事:
定期報告制度(12条点検)とは?~法改正のポイントと国が定める対象建築物について解説~

12条点検の対象外となる建築物・設備とは?

すべての建築物・設備が12条点検の対象となるわけではありません。点検の対象となる建築物および設備は、その用途や規模などによって細かく分類されています。点検にあたっては、まず、自身が所有または管理する建築物・設備が検査の対象になるのかを把握することが大切です。

各調査の対象となる建築物・施設は、特定行政庁によって異なります。例えば、用途に供する部分の床面積が5,000㎡のオフィスビルは、東京では報告対象になりますが、神奈川県では報告対象外となっています。調査時期を迎えるまえに、管轄の特定行政庁のウェブサイトなどをしっかりと確認して、調査に関する情報を集めておくことが重要です。

本章では、東京都を例に挙げて、各調査の対象となる建築物の用途と条件を紹介します。

関連記事:
12条点検(特定建築物定期調査)の対象範囲が拡大します

特定建築物定期調査の対象となる建物

東京都で特定建築物定期調査の対象となる建築物は、以下のとおりです。

用途 規模または階
(いずれかに該当するもの)
特定建築物 劇場、映画館、演芸場
  • 地階または3階以上の階で、用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)
  • 用途部分の床面積の合計が200㎡より大きい
  • 主階(舞台・客席等の出口がある階)が1階にないもので用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい
※用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合、階数が3以上のものに限る
観覧場(屋外観覧席のものを除く)、公会堂、集会場
  • 地階または3階以上の階で、用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)
  • 用途部分の床面積の合計が200㎡より大きい
※平家建ての集会場で客席および集会室の床面積の合計が400㎡未満のものを除く
旅館、ホテル(毎年報告のもの) 3階以上の階で用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)、かつ、用途部分の床面積の合計が2,000㎡より大きい
百貨店、マーケット、勝馬投票券発売所、場外車券売場、物品販売業を営む店舗(毎年報告のもの) 3階以上の階で用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)、かつ、用途部分の床面積の合計が3,000㎡より大きい
地下街 用途部分の床面積の合計が1,500㎡より大きい
児童福祉施設等(※1に掲げるものを除く)
  • 3階以上の階で、用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)
  • 用途部分の床面積の合計が300㎡より大きい
※平家建てで床面積の合計が500㎡未満のものを除く
病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る)、児童福祉施設等(※1に掲げるものに限る)
  • 地階または3階以上の階で、用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)
  • 2階部分の用途部分の床面積の合計が300㎡以上
  • 用途部分の床面積の合計が300㎡より大きい
※平家建てで床面積の合計が500㎡未満のものを除く
旅館、ホテル(毎年報告のものを除く)
学校、学校に附属する体育館
  • 3階以上の階で、用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)
  • 用途部分の床面積の合計が2,000㎡より大きい
博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場、体育館(いずれも学校に附属するものを除く)
  • 3階以上の階で、用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)
  • 用途部分の床面積の合計が2,000㎡以上
下宿、共同住宅または寄宿舎の用途とこの表(事務所等を除く)に掲げられている用途の複合建築物 5階以上で用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)、かつ、用途部分の床面積の合計が1,000㎡より大きい
百貨店、マーケット、勝馬投票券発売所、場外車券売場、物品販売業を営む店舗 (毎年報告のものを除く)
  • 地階または3階以上の階で、用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)
  • 2階部分の用途部分の床面積の合計が500㎡以上
  • 用途部分の床面積の合計が500㎡より大きい
展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店
複合用途建築物(共同住宅等の複合用途および事務所等のものを除く)
  • 3階以上の階で、用途部分の床面積の合計が100㎡以上(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)
  • 用途部分の床面積の合計が500㎡より大きい
事務所その他これに類するもの 5階建て以上で、延べ面積が2,000㎡を超える建築物のうち、3階以上で用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)、かつ、用途部分の床面積の合計が1,000㎡より大きい
下宿、共同住宅、寄宿舎(※1に掲げるものを除く) 5階以上で用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)、かつ、用途部分の床面積の合計が1,000㎡より大きい
高齢者、障害者等の就寝の用に供する共同住宅または寄宿舎(※1に掲げるものに限る)
  • 地階または3階以上の階で、用途部分の床面積の合計が100㎡より大きい(用途部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階以上の階に限る)
  • 2階以上の用途部分の床面積の合計が300㎡以上

※1 高齢者、障害者等の就寝の用に供する用途とは、共同住宅および寄宿舎(サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホームに限る)ならびに児童福祉施設等(助産施設、乳児院、障害児入所施設、助産所、盲導犬訓練施設、救護施設、更生施設、老人短期入所施設その他これに類するもの、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、母子保健施設、障害者支援施設、福祉ホームおよび障害福祉サービスを行なう施設に限る)をいいます。

【注意】

  • 共同住宅(高齢者、障害者等の就寝の用に供するものを除く)の住戸内は、定期調査・検査の報告対象から除かれます。
  • 用途・規模等、初回免除の考え方(新築の建築物は、検査済証の交付を受けた直後の時期については報告する必要はありません)などについては、東京都都市整備局ウェブサイトを併せてご覧ください。

出典:東京都都市整備局「定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧

特定建築物定期調査については、下記関連記事にも詳しく掲載していますので、併せてご確認ください。

関連記事:
特定建築物定期調査の対象となる建物とは? ~ 一覧で詳しく紹介します ~
特定建築物定期調査 建物所有者等による報告書の確認ポイント

防火設備定期検査の対象となる建物

東京都で防火設備定期検査の対象となる設備は、以下のとおりです。

用途 規模または階
(いずれかに該当するもの)
防火設備 随時閉鎖または作動できるもの
(防火ダンパーを除く)
  • 上表の特定建築物に該当する建築物に設けられるもの
  • 以下に掲げる用途で、その用途に供する部分の床面積が200㎡より大きい建築物に設けられるもの
  1. 病院、診療所(患者の収容施設のあるものに限る)
  2. 高齢者、障害者等の就寝の用に供する用途

※ 高齢者、障害者等の就寝の用に供する用途とは、共同住宅および寄宿舎(サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホームに限る)ならびに児童福祉施設等(助産施設、乳児院、障害児入所施設、助産所、盲導犬訓練施設、救護施設、更生施設、老人短期入所施設その他これに類するもの、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、母子保健施設、障害者支援施設、福祉ホームおよび障害福祉サービスを行なう施設に限る)をいいます。

出典:東京都都市整備局「定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧

建築設備定期検査の対象となる建物

東京都で建築設備定期検査の対象となる設備は、以下のとおりです。

用途 規模または階
(いずれかに該当するもの)
建築設備 換気設備(自然換気設備を除く) 上表の特定建築物に該当する建築物に設けられるもの
排煙設備(排煙機または送風機を有するもの)
非常用の照明装置
給水設備および排水設備(給水タンク等を設けるもの)

※ 報告対象の換気設備は、火気使用室、無窓居室または集会場等の居室に設けられた機械換気設備に限ります。

出典:東京都都市整備局「定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧

昇降機等定期検査の対象となる建物

東京都で昇降機等定期検査の対象となる設備は、以下のとおりです。

用途 規模または階
(いずれかに該当するもの)
昇降機等 エレベーター
※労働安全衛生法施行令第12条第1項第六号に規定するエレベーター(労働安全衛生法の性能検査を受けているもの)を除く
ただし、かごが住戸内のみを昇降するもの(一戸建て、長屋または共同住宅の住戸内に設けられた昇降機)を除く
エスカレーター
小荷物専用昇降機(昇降機のすべての出し入れ口の下端が当該出し入れ口が設けられる室の床面よりも50cm以上高いもの(テーブルタイプ)を除く)
遊戯施設等(乗用エレベーター、エスカレーターで観光用のものを含む)

出典:東京都都市整備局「定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧

12条点検の対象外なら、定期調査は不要?

12条点検の対象外なら、法的には、建築物の定期調査は必要ありません。しかし、定期的に調査を行わなければ、建築物や各種設備の不備に気付けず、思わぬ重大事故が発生してしまう可能性があります。

また前述のとおり、同じ規模の建物であっても、ある地域では法定点検が義務であり、その他の地域では法定点検の対象外、といったケースもあります。こういった問題への対応は、原則、管理会社で行う必要がありますが、人材などのリソース不足に悩む企業もあるでしょう。

「地域や規模に関わらず、一定の基準で点検を行い、建築物や施設の安全性を担保したい」「12条点検の対象外ではあるものの、念のため定期的に調査を行いたい」「管理会社で独自に行なっている定期点検をアウトソーシングしたい」という所有者、管理者の方は、年間検査実績12,000件(2022年1月~12月実績)を誇る、ビューローベリタスにお任せください。

ビューローベリタスでは、建築基準法第12条の定期報告と同じ基準、同じ報告様式により点検を実施する、「自主検査」のサービスを延べ約100社、計1,000件提供しています。法定義務はないため特定行政庁への報告等は不要ですが、建物の安全性を守るために広くご活用いただいています。

参考:
12条点検(建築基準法第12条 定期報告)

関連記事:
建築基準法における定期報告制度に沿った自主点検について

まとめ

12条点検は、不特定多数の人が利用する特定建築物とその設備の安全性を確保するための点検・報告制度です。検査は特定建築物定期調査、防火設備定期検査、建築設備定期検査、昇降機等定期検査の4種類あり、それぞれ検査対象や報告頻度が異なります。所有または管理する建築物や設備が検査対象となっているか確認し、確実に検査を実施できるよう準備しておきましょう。

また、所有または管理する建築物や設備が12条点検の対象となっていない場合でも、建築物と設備の安全性を保つために、定期的な検査は欠かせません。重大事故の発生を防ぐためにも、適宜点検や修繕を実施しましょう。

12条点検や自主点検でお悩みの方は、経験豊富な調査員が多数在籍するビューローベリタスへご相談ください。日本全国どこでも調査が可能です。 ビューローベリタスへの見積もり依頼は、こちらのページから行えます。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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