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特定建築物定期調査の対象となる建物とは? ~ 一覧で詳しく紹介します ~

2021/11/10

建築基準法第12条(定期報告)では、建築物の所有者・管理者に特定建築物定期調査の実施とその結果報告が義務づけられているため、自身の物件が特定建築物定期調査の対象であるかどうかを把握しておくことが重要です。
本記事では、特定建築物定期調査の対象となる建物と条件について詳しく解説します。また、特定建築物定期調査と同様に12条点検に属する「防火設備定期検査」「建築設備定期検査」「昇降機定期検査」についても併せて説明します。
建築物の所有者および管理者の方は、ぜひ参考にしてください。

特定建築物定期調査の対象となる建物と条件

そもそも、特定建築物定期調査とは?

特定建築物定期調査は、建築基準法第12条により定められている調査・検査です(12条点検とも呼ばれます」。

建築基準法第12条では、調査対象となる特定建築物の敷地・構造・設備を定期的に調査し、特定行政庁へ報告することを建築物の所有者または管理者に義務づけています。調査は以下の4つに分類され、それぞれの調査対象や内容が定められています。

  • 特定建築物定期調査
  • 防火設備定期検査
  • 建築設備定期検査
  • 昇降機定期検査

このなかで特定建築物定期調査は、特定建築物として指定された不特定多数の人々が利用する建築物を対象に、利用者の安全を守ることを目的に行われるものです。

特定建築物については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。併せて参考にしてください。

参考記事:特定建築物とは?~特定建築物に該当した場合にすべきこと~

また、特定建築物定期調査は、以下の専門技術の有資格者のみが行える調査です。

  • 一級建築士
  • 二級建築士
  • 特定建築物調査員(法定講習の修了者で、国土交通大臣から特定建築物調査員証の交付を受けた者)

特定建築物の所有者・管理者は、上記の有資格者に調査をさせる必要があります。自社に有資格者がいればその方が調査してもよいですし、外部の有資格者および専門業者等に調査を委託しても構いません。

特定建築物定期調査の対象となる建物

特定建築物定期調査の対象となる建物は、安全上特に重要とされるものについては政令で一律に指定されています。また政令以外でも、地域の実情に応じて特定行政庁が調査対象を指定しています。
そのため、建築物の所有者・管理者は、必ず双方の対象および条件を確認するように注意しましょう。
本章では、政令で指定されている特定建築物定期調査の対象と、特定行政庁の一例として東京都で指定されている対象、およびそれぞれの条件について紹介します。

特定建築物定期調査の対象となる建物と条件

【政令指定】特定建築物定期調査の対象となる建物と条件

政令指定による、特定建築物定期調査の対象となる建物と条件は、以下のとおりです。なお、条件のいずれかに該当すれば調査対象となります。
また、いずれの建物でも、該当する用途部分が避難階のみにある場合は対象外となります。

劇場、映画館、演芸場

  • 3階以上もしくは地下の階にあり、用途に供する部分の床面積が100㎡を超える場合
  • 客席の床面積が200㎡を超える場合
  • 主階(舞台・客席等の出口がある階)が1階にない場合で、用途に供する部分の床面積が100㎡を超える場合

観覧場、公会堂、集会場

ここでの観覧場は、屋外に観覧席がある場合を除外します。

  • 3階以上もしくは地下の階にあり、用途に供する部分の床面積が100㎡を超える場合
  • 客席の床面積が200㎡以上の場合

病院、有床診療所、旅館、ホテル、就寝用福祉施設

就寝用福祉施設は、利用者の特性から避難時に時間がかかると考えられる、次のような施設を指します。

サービス付き高齢者向け住宅/認知症高齢者グループホーム、障害者グループホーム/助産施設、乳児院、障害児入所施設/助産所/盲導犬訓練施設/救護施設、更生施設/老人短期入所施設/小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護の事業所/老人デイサービスセンター(宿泊サービスを提供するものに限る。)/養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム/母子保健施設/障害者支援施設、福祉ホーム、障害福祉サービス(自立訓練または就労移行支援を行う事業に限る)の事業所(利用者の就寝の用に供するものに限る

  • 3階以上もしくは地下の階にあり、用途に供する部分の床面積が100㎡を超える場合
  • 2階の床面積が300㎡以上の場合(※)

※病院、有床診療所は、2階の部分に患者の収容施設があるものに限定される

体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場

いずれの建物も、学校に付属する場合は除外されます。

  • 3階以上の階にあり、用途に供する部分の床面積が100㎡を超える場合
  • 床面積が2,000㎡以上の場合

百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗

  • 3階以上もしくは地下の階にあり、用途に供する部分の床面積が100㎡を超える場合
  • 2階の床面積が500㎡以上の場合
  • 床面積が3,000㎡以上の場合

【東京都の指定】特定建築物定期調査の対象

特定行政庁の一例として、東京都が定めた特定建築物定期調査の対象となる建物と条件を紹介します。

劇場、映画館、演芸場

  • 地階もしくは3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超える場合
  • 主階(舞台・客席等の出口がある階)が1階になく、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合(※)

※用途に供する部分の床面積の合計が200㎡以下の場合は3階数以上に限る

以上の条件のいずれかに該当する場合、毎年の調査・報告が義務づけられています。

観覧場、公会堂、集会場

ここでの観覧場は、屋外に観覧席がある場合を除外します。

  • 地階もしくは3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超える場合(※)

※平家建ての集会場で客席・集会室の床面積の合計が 400㎡未満の集会場は除く

以上の条件のいずれかに該当する場合、毎年の調査・報告が義務づけられています。

旅館、ホテル

東京都では、旅館、ホテルを用途とする建物について、条件ごとに定期報告の期間が異なります。
以下の条件に該当する建物は、毎年の調査・報告が義務づけられています。

  • 3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が2,000㎡を超える場合

また、以下の条件のいずれかに該当する建物については、3年ごとの調査・報告が必要です。

  • 地階もしくは3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 2階部分の用途に供する部分の床面積の合計が300㎡以上の場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が300㎡を超える場合(※)

※平家建ての建物で床面積の合計が500㎡未満のものを除く

百貨店、マーケット、勝馬投票券発売所、場外車券売場、物品販売業を営む店舗

以下の条件に該当する場合、毎年の報告が義務づけられています。
  • 3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が3,000㎡を超える場合

なお、毎年報告の条件に該当しない場合でも、以下のいずれかの条件に該当すれば3年ごとの報告が必要になります。

  • 地階もしくは3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 2階部分において、用途に供する部分の床面積の合計が500㎡以上の場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が500㎡を超える場合

地下街

東京都では、以下の条件に該当する地下街について特定建築物定期調査の対象と定め、毎年の報告が義務づけられています。

  • 用途に供する部分の床面積の合計が1,500㎡を超える場合

病院、診療所

ここでの診療所とは、患者の収容施設があるものに限ります。

  • 地階もしくは3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 2階部分の用途に供する部分の床面積の合計が300㎡以上の場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が300㎡を超える場合(※)

※平家建ての建物で床面積の合計が500㎡未満のものを除く

児童福祉施設等

児童福祉施設は、施設の用途によって調査対象となる条件が異なります。

助産施設、乳児院、障害児入所施設、助産所、盲導犬訓練施設、救護施設、更生施設、老人短期入所施設その他これに類するもの

以上の施設が調査対象となるのは、以下のいずれかに該当する場合です。

  • 地階もしくは3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 2階部分の用途に供する部分の床面積の合計が300㎡以上の場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が300㎡を超える場合(※)

※平家建ての建物で床面積の合計が500㎡未満のものを除く

また、それ以外の児童福祉施設等では、以下のいずれかに該当する場合に調査対象となります。

  • 3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が300㎡を超える場合(※)

※平家建てで床面積の合計が500㎡未満のものを除く

いずれの場合も、3年ごとの調査報告が必要です。

学校、学校に付属する体育館

東京都の学校および学校に付属する体育館は、以下の条件に該当する場合には3年ごとの報告義務があります。

  • 3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が2,000㎡を超える場合

博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場、体育館

いずれも、学校に付属する場合は対象から除外されます。

  • 3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が2,000㎡を超える場合

以上の条件に該当する建物は、3年ごとの報告義務があります。

展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店

以下のいずれかの条件に該当する場合は、3年ごとの報告が必要です。

  • 地階もしくは3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 2階部分において、用途に供する部分の床面積の合計が500㎡以上の場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が500㎡を超える場合

複合用途建築物

複合用途建築物のうち、共同住宅等の複合用途および事務所等のものは以外で、以下のいずれかの条件に該当する建物は、3年ごとの報告が必要です。

  • 3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が500㎡を超える場合

事務所その他これに類するもの

以下の条件すべてに該当する場合は3年ごとの報告が必要です。

  • 5階建て以上の場合
  • 延べ面積が 2,000㎡を超える場合
  • 3階以上の階で用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が1,000㎡を超える場合

高齢者、障害者等の就寝用に供する共同住宅または寄宿舎

ここでの共同住宅または寄宿舎とは、サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホームに限定されています。
これらの施設のうち、以下の条件に該当する場合は3年ごとの調査報告が必要です。

  • 地階もしくは3階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 2階部分において、用途に供する部分の床面積の合計が300㎡以上の場合

下宿、共同住宅、寄宿舎

ここでの寄宿舎とは、前述の高齢者、障害者等の就寝の用に供する共同住宅または寄宿舎を除いたものを指します。

  • 5階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が1,000㎡を超える場合

以上の条件に該当する場合、3年ごとの報告が必要です。

下宿、共同住宅または寄宿舎の用途を含む複合建築物

下宿、共同住宅または寄宿舎と、ここまでに挙げた建築物のうち事務所等以外のものを複合施設として併せ持つ場合は、以下の条件により3年ごとの報告が必要になります。

  • 5階以上の階で、用途に供する部分の床面積の合計が100㎡を超える場合
  • 用途に供する部分の床面積の合計が1,000㎡を超える場合

防火設備定期検査の対象となる設備

防火設備定期検査は、平成28年の法改正によって新たに定期報告が必要となった検査です。調査対象として定められた設備について、条件に該当する場合は定期検査の義務があります。
ここでは、政令指定および東京都が指定する調査対象設備と条件を紹介します。特定建築物定期調査の対象となる建築物に設けられていることは共通条件です。

防火設備定期検査の対象となる設備

政令(建築基準法施行令)で指定する防火設備定期検査の対象

検査対象

  • 政令指定で特定建築物定期調査の対象となる建築物の防火設備
  • 病院、有床診療所または就寝用福祉施設の防火設備
    ただし、病院、有床診療所または就寝用福祉施設で、用途部分に該当する床面積の合計が200㎡以上の場合

例外:常時閉鎖式の防火設備、防火ダンパー、外壁開口部の防火設備

東京都が指定する検査対象

検査対象

  • 特定建築物定期調査の対象となる建築物の防火設備(防火ダンパーを除く)のうち、随時閉鎖または作動できるもの
  • 対象建築物のうち、病院、患者収容施設のある診療所および高齢者、障害者等の就寝用に供する用途においては、床面積の合計が200㎡を超える建築物に設置される防火設備(防火ダンパーを除く)

建築設備定期検査の対象となる設備

建築設備定期検査は、政令による指定がありません。検査対象となる設備は特定行政庁ごとで異なり、それぞれ確認する必要があるため、注意が必要です。

ここでは、例として東京都と神奈川県のケースを紹介します。特定建築物定期調査の対象となる建築物に設けられていることは共通の条件です。

東京都が指定する検査対象

東京都では、以下に該当する場合に毎年の建築設備定期検査報告が必要です。

検査対象

  • 火気使用室、無窓居室または集会場等の居室に設けられた機械換気設備のうち、自然換気設備を除くもの
  • 排煙機または送風機を有する排煙設備
  • 非常用の照明装置
  • 給水タンク等を設けている給水設備および排水設備

神奈川県が指定する検査対象

神奈川県では、以下に該当する場合に毎年の建築設備定期検査報告が必要です。

検査対象

  • 排煙設備(排煙機を設けたものに限る)
  • 非常用の照明装置(予備電源内蔵型を除く)

昇降機等設備点検の対象となる設備

昇降機等設備点検の政令指定の対象設備と、東京都指定による点検対象設備は以下のとおりです。

政令指定による昇降機等設備点検の対象

  • エレベーター
  • エスカレーター
  • 小荷物専用昇降機(フロアタイプ)

ただし、以下については例外となります。

  • 住居内のみを昇降する昇降機
  • 工場内に設置されている専用エレベーター

東京都による昇降機等設備点検の対象

  • エレベーター(労働安全衛生法の性能検査を受けているものを除く)
  • エスカレーター
  • 小荷物専用昇降機(テーブルタイプを除く)
  • 遊戯施設等(乗用エレベーター、エスカレーターで観光用のものを含む)

※ただし、かごが住戸内のみを昇降するもの(一戸建て、長屋または共同住宅の住戸内に設けられた昇降機)を除く

まとめ

特定建築物定期調査は、不特定多数の人が利用する建築物の安全性を確保するために、定期的に行われる調査です。調査対象となる建築物の所有者・管理者は、特定行政庁へ調査結果を報告することが義務づけられています。

建築物が調査対象かどうかを判断するためには、政令で指定された条件および特定行政庁が指定する条件の双方を確認することが重要です。また、調査を行えるのは専門技術を有する資格者に限定されているため、自社に有資格者が不在の場合には専門業者などに依頼しましょう。

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