TOPページ > コラム・BV MAGAZINE> 定期報告(12条点検)を怠ると罰則はある? ~通知・督促の流れも併せて解説~

定期報告(12条点検)を怠ると罰則はある? ~通知・督促の流れも併せて解説~

2023/11/06

特定建築物やその他の設備を有するオーナーもしくは管理担当者にとって、定期報告(12条点検)を怠った際の罰則は気になるポイントではないでしょうか。定期報告は義務であり、建築物の安全性を保つうえで欠かせないため、その内容はきちんと把握しておかなくてはなりません。

本記事では、定期報告の概要を踏まえつつ、定期報告を怠ることで発生する罰則、通知・督促の流れや重要性について解説します。建築物を所有・管理している方は、ぜひ参考にしてください。

そもそも定期報告(12条点検)とは?

定期報告(12条点検)とは、不特定多数が利用する施設の安全性を維持するため、建築基準法第12条に定められた調査制度のことです。

病院、福祉施設、ホテル、デパートといった施設では、老朽化や設備不良などによって人命を脅かす重大な事故や災害が起こる可能性もあります。それを未然に防ぐため、法律に基づく厳格な調査・検査が行なわれています。

定期報告は調査の対象ごとに、以下の4種類に分類されます。

対象となる建築物や設備の所有者は、有資格者による定期的な検査を実施したうえで、その結果を管轄の特定行政庁に報告することが義務付けられています。

関連記事:
定期報告制度(12条点検)とは?~法改正のポイントと国が定める対象建築物について解説~

定期報告(12条点検)を怠った場合、罰則はある?

定期報告(12条点検)は法律で定められたルールのため、対象の建築物などを所有・管理している場合、必ず実施しなければなりません。定期報告を怠ったり、虚偽の報告を行なった場合、建築基準法第101条に基づき100万円以下の罰金が科せられます。

虚偽の報告における一例

  • 調査・検査を行なわず、報告書だけ作成した
  • 劣化や破損を発見したにもかかわらず、報告書には「問題なし」と記載した

また、虚偽の報告を行なった場合、建築物の所有者・管理者だけではなく、定期報告を実施した有資格者にも罰則が科せられます。

※有資格者証の返納を求められ、それに応じなかった場合、30万円以下の罰金に処されます。

参考:
建築基準法|e-Gov法令検索

故意であるかどうかを問わず、定期報告を怠った時点で法律違反となります。そのため、あらかじめ定期報告の対象や実施時期、注意点などについて押さえておくことが大切です。

関連記事:
建築基準法 定期報告を怠ったり偽ったりした場合のリスク・罰則

定期報告(12条点検)を怠ると、督促状が届く?

定期報告(12条点検)を怠ったとしても、即座に罰則が下るケースはほとんどありません。行政によって対応は異なりますが、おもに以下のような流れで通知・督促状が届き、最終的に罰則が科せられます。

  • 必要書類や提出期限などが記載された定期報告の通知書が届く
  • 期日までに報告書を提出しなかった場合、行政通知が届く
  • 行政通知を無視した場合、督促状が届く
  • 督促状も無視した場合、行政の立ち入り検査や指導が入る
  • 物件名や所有者などが公表される
  • 建築基準法第101条に基づき、100万円以下の罰金が科せられる

定期報告は単なる法律上のルールではなく、建築物の安全性を保つために欠かせない取り組みなので、きちんと実施する必要があります。

関連記事:
12条点検(建築基準法第12条 定期報告)の通知書が届いたら?対応方法や無視した場合の罰則など

重大事故の事例から見る、定期報告(12条点検)の重要性

定期報告(12条点検)を怠ったことにより、被害が拡大したと見られる2件の事故事例をご紹介します。定期報告を実施することの重要性を理解することができるでしょう。

福山市ホテル火災事故(2012年5月)

2012年5月13日早朝、広島県福山市にあるホテルで火災が発生し、宿泊客7名が死亡、従業員1名を含む3名が負傷した事故です。ホテルの火災事故で7名以上の死者を出した事例は、1986年静岡県東伊豆町、ホテル大東館で死者24名を出した火災事故以来となります。

この火災で、ホテル経営者の元社長には、業務上過失致死傷害罪で、執行猶予5年・禁固3年の有罪判決が下りました。消防法第35条に基づき火災の原因調査を行なったところ、8つの項目で建築基準法違反が指摘されたほか、以下のようなさまざまな要素が重なって甚大な人的被害を出したと見られています。

  • 建築基準法に基づいた定期報告が38年間もの間、一切行なわれていなかった
  • 建築構造が建築基準法に適合していなかった
  • 法律で設置が義務付けられた排煙設備が未設置だった
  • 階段の防火区画(たて穴区画)が未設置だった

この火災事故により、1971年以前に建築された防火管理者の選任義務がある3階建て以上のホテル・旅館などに対する緊急調査が、全国の消防本部により実施されました。その結果、調査の対象となった797施設のうち、約7割を占める549施設にて消防法令違反が見つかったため、是正が行なわれています。

歌舞伎町ビル火災事故(2001年9月)

2001年9月1日深夜、東京都新宿区歌舞伎町のナイトクラブやゲーム店が混在した雑居ビルで火災が発生し、3階以上にいた在館者44名が死亡、3名が負傷した事故です。ビル火災では、1980年の川治プリンスホテル火災(45名死亡)に次いで、戦後4番目に多い犠牲者数を出しました。

この火災事故では、ビルを所有していた会社役員やテナントオーナーを含む計5名に対し、執行猶予付きの有罪判決が下りました。2006年に遺族との和解が成立してビルも解体されましたが、和解金は総額8億6,000万円に上ったといわれています。

火災の原因調査の結果、以下のような要素によって大惨事を招いたと考えられています。

  • 建築基準法に基づいた定期報告を怠っていた
  • 誤作動が多いことを理由に、自動火災報知器の電源が切られていた
  • 自動火災報知機を含めた天井部分が内装材で覆い隠されていた
  • 排煙口が目隠しのために塞がれており、内側からは開けられない状態だった

この歌舞伎町ビル火災事故が契機となり、消防法が大きく改正されています。

定期報告(12条点検)について、建築物所有者が知っておくべきこと

定期報告(12条点検)は制度内容が複雑で、わかりにくい部分もあります。そのため、義務であることは理解しつつも、定期調査・報告を後回しにしてしまうオーナーや管理担当者も珍しくありません。

しかし、定期報告を怠ると罰則の対象になるだけではなく、取り返しのつかない重大な事故や災害のリスクを高めます。
そこで、以下のコラムを参考に、まずは制度に関する知識を深めることをおすすめします。

定期報告を実施する場合、対象となる建築物や設備はもちろん、検査内容や通知の流れも把握しておきましょう。調査は有資格者が行ないますが、「どこの、何を調べるのか」という点をある程度知っておくと、危機意識が高まります。

また、質の高い点検会社に依頼することも大切です。会社のウェブサイトで実績や検査歴をチェックしたうえで、複数の会社に相見積もりを取って比較すると、費用を抑えられるだけでなく、トラブルも避けられるようになります。

まとめ

定期報告(12条点検)は建築基準法によって定められた制度であり、病院やホテルなど不特定多数の方が利用する施設の安全性を保つことが目的です。対象となる建築物を所有・管理している場合、必ず実施しなければなりません。

定期報告を怠ったり、虚偽の報告を行なったりした場合、罰金を科せられてしまいます。さらに、重大な事故や災害が起こるリスクも高まるため、取り返しのつかない事態を防ぐためにも、定期報告の通知書が来たら速やかに対応しましょう。

ビューローベリタスは年間12,000件の実績があり、既存建物の各種法定点検をサポートしているほか、劇場やスタジアムといった特殊建物にも対応しています。

また、お客様の予定や建物の使用状況を踏まえて、12条点検のスケジュールを柔軟に決めることができます。12条点検を実施する際は、ぜひビューローベリタスへご依頼ください。12条点検についてのご質問やご相談はお気軽にお問い合わせください。

page top