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非常用の照明装置の設置基準とは構造や選択基準も解説

2022/09/06

建築基準法第12条の定期報告(特定建築物定期調査や建築設備定期検査)においてご質問を受けることの多い非常用照明について解説します。

非常用照明は、建物の安全性を確保するために欠かせない設備の一つです。非常用照明の設置基準などは建築基準法によって細かく定められているため、設置された建物を維持管理する場合など適切に対応する必要があります。

非常用照明器具とは

非常用照明器具とは、地震や火災などの災害によって停電した際、予備電源によって点灯し、避難や救助活動を助ける照明器具のことです。
非常用照明器具の設置義務や設置基準は、建築基準法によって定められています。建物を新築・維持管理などする場合は、法律にしたがって適切に照明を設置してください。
なお、非常用照明のうち自主定評に合格した製品には、「JIL適合マーク」がつきます。

また、非常用照明は建築基準法第12条の定期報告(特定建築物定期調査や建築設備定期検査)の検査項目の一つです。非常用照明を設置している建築物の所有者・管理者は、有資格者に依頼して、定期的に検査を実施しなければなりません。
検査後は地方自治体へ検査結果を報告しなくてはならないため、非常用照明の設置と併せて、検査・報告の概要も知っておく必要があります。

非常用照明の設置基準

非常用照明の設置義務がある場所

建築物の種類と規模によって、非常用照明の設置義務の有無が異なります。

非常用照明設置の対象となる建築物の種類と規模

  • 下記①~④の用途に供する特殊建築物
    ① 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場その他これらに類するもので政令で定めるもの
    ② 病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎、その他これらに類するもので政令で定めるもの
    ③ 学校、体育館、その他これらに類するもので政令で定めるもの
    ④ 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、その他これらに類するもので政令で定めるもの
  • 階数が3以上で延べ面積が500㎡を超える建築物
  • 延べ面積が1000㎡を超える建築物
  • 無窓の居室を有する建築物

出典:建築基準法施行令 第百二十六条の四

以上の建築物の居室から地上に通ずる廊下、階段その他の通路(採光上有効に直接外気に開放された通路を除く)、これに類する建築物の部分に非常用照明の設置が必要です。

非常用照明の設置が不要になる場合

建築物によっては、非常用照明の設置が、一部またはすべて免除される場合があります。

非常用照明設置が免除される建築物の種類

  • 一戸建の住宅または長屋若しくは共同住宅の住戸
  • 病院の病室、下宿の宿泊室または寄宿舎の寝室、その他これらに類する居室
  • 学校等
  • 避難階または避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないもの、その他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるもの

出典:建築基準法施行令 第百二十六条の四

非常用照明の設置基準は非常に複雑です。自身の所有または管理する建物が設置対象となっているかどうかよくわからない場合は、有資格者や特定行政庁等に確認が必要です。

非常用照明に求められる構造

非常用照明に利用できる照明には基準があります。非常用照明に求められる構造を、照明器具の種類と照度、電気配線、電源の3項目に分けて解説します。

照明器具の種類と必要な照度

非常用照明に利用できる照明器具は、耐熱性と即時点灯性を有し、建築基準法に定められた素材で作られた白熱球、蛍光灯、LEDランプに限られます。

また、器具内の電線は絶縁性を持ち、照明器具の主要部分を難燃材料で作る等、一定の基準を満たすことも必要です。
常温下で床面において水平面照度で1ルクス(蛍光灯またはLEDランプを用いる場合は2ルクス)以上が必要であり、これを満たさなければ非常用照明として認められません。
照明器具には非常時に確実に点灯し、なおかつ一定の照度を保てるといった性能が求められています。

電気配線

非常用照明の器具が点灯できる状態でも、電気配線に不具合があると点灯に至らないため、照明器具だけでなく電気配線にも基準が設けられています。

また、非常用照明の電気配線は、ほかの電気配線に接続せず、一般の者が容易に電源を遮断できないようにする必要があります。また、耐火構造の主要構造部に埋設した配線等と同等以上の防火措置を講じなければなりません。

電源

非常用照明器具の電源には、常用電源と予備電源が使用されます。
照明器具内に予備電源を有する場合、予備電源は自動充電装置時限充電装置を有する蓄電池、または蓄電池と自家用発電装置を組み合わせたものを使用します。
予備電源は停電時に自動的に切り替えられ、充電を行うことなく、30分間継続して非常用の照明装置を点灯させられなければなりません。予備電源を利用する際には、機能が基準を満たしているかどうかを必ず確認しましょう。
また、予備電源の開閉器には非常照明用の電源である旨を表示する必要があります。

非常用照明を選ぶ基準

非常用照明にはさまざまなタイプがあるため、施設に応じて適切なものを選ぶ必要があります。照明の選択基準は、光源の種類、点灯形態、蓄電池の種類の3つです。それぞれ特徴を解説します。

光源の種類

蛍光灯 寿命は6,000~1万3,000時間。寒い場所では明るくなるのに時間がかかる。広範囲を照らすのに向いている。
白熱灯 コストは低いが寿命は短く、およそ1,000~2,000時間。電球の一部がガラスでできているため、割れるとケガをする恐れがある。
LED 導入コストは高いが寿命は長く、およそ2万~4万時間。コンパクトで狭いスペースでも利用でき、省エネ効果が高く、虫が寄りにくいといったメリットもある。

点灯形態

専用型 停電時にのみ点灯する。
組み込み型 平常時と停電時それぞれの光源を持つため、非常時の光源の寿命が長期化できる。
併用型 平常時と停電時の光源が同じで、停電時は蓄電池で点灯する。

蓄電池の種類

電源内蔵型 バッテリーが内蔵されているタイプ。メンテナンスの際は、照明の寿命に加えてバッテリーの寿命も考慮する必要がある。
電源別置型 電源が照明とは別になっているタイプ。

まとめ

非常用照明には、避難時や救助活動時の照度確保といった大切な役割があります。建築基準法を遵守し、適切に非常用照明を設置・管理してください。

また、建物の安全を守るものには、非常用照明以外にも防火設備や消防設備などがあり、それらの設置の対象となる建築物を所有または管理している場合は、定期的な検査・報告が必要なものもあります。

ビューローベリタスでは、下記の検査を全国で実施していますので、お気軽にお問い合わせください。

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