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外壁タイル落下事故の事例4選から見る、外壁調査の重要性を解説

2024/03/07

建物の外壁は外部環境の影響を受けやすく、時間の経過とともに劣化が進んでいきます。そのため、定期的な調査やメンテナンスが必要です。外壁のメンテナンスを怠ると、汚れなどで建物の外観が悪くなるだけでなく、劣化によって外壁材が落下する事故につながる恐れもあります。

今回は、劣化や事故を未然に防ぐための外壁調査の重要性について、実際に起きた事故の事例を交えながら紹介します。

近年、外壁タイルの落下事故が増えている

近年、日本全国で外壁タイルの落下事故が多発しています。建物の外壁は新築時のままの耐久性をずっと保てるわけではなく、次のような要因によって、年月の経過とともに少しずつ劣化していきます。

  • 大雨、強風
  • 台風、地震
  • 施工不良
  • 経年劣化
  • 定期点検の指摘箇所の未補修

外壁は、1年を通して外的要因によるさまざまな影響を受け続けています。なかでも梅雨頃から夏にかけては、大雨や台風、強い紫外線などの影響で、外壁が特にダメージを受けやすい時期です。この時期はマンションなどの外壁に貼られたタイルが剥がれたり、浮いてしまったりなど、劣化が多く見られる傾向にあります。

さまざまな要因が重なって外壁の劣化が進むと、建物の耐久性も弱くなり、外壁の落下事故を引き起こす危険性が高まります。最悪の場合、剥がれ落ちたタイルで通行人などにケガを負わせることにもなるでしょう。

外壁タイルの落下事故の事例4選

本章では、過去に発生した外壁タイル落下事故の事例を紹介します。

【事例1】飲食店外壁モルタル落下事故(山形県)

被害の程度:重傷者1名 定期検査:未実施 日常点検:未実施

  • 事故状況
    2016年(平成28年)5月5日、飲食店2階部分の外壁モルタルが落下し、被害者の頭を直撃しました。落下したモルタルの大きさは、約30㎝×15㎝もの大きさでした。
  • 事故原因
    外壁モルタルは経年劣化で収縮し、平行にクラック(ひび割れ)が入っていたとみられます。そして、風雨でクラックから水がつたい、モルタルが剥離して、事故当時吹いていた強風にあおられモルタルが落下し、1名が重傷を負いました。

この飲食店は定期検査対象外の建物であり、なおかつ日常点検についても未実施であったことが、この事故に影響したと考えられます。

【事例1】飲食店外壁モルタル落下事故(山形県)写真(外壁剥離箇所) 【事例1】飲食店外壁モルタル落下事故(山形県)写真(外壁落下建物全景)
外壁剥離箇所 外壁落下建物全景

出典:建築物事故内容報告事例(No.1:山形県内外壁落下事故)|東京都都市整備局

【事例2】二丁掛けタイル落下事故(大阪府)

被害の程度:軽傷者1名 定期検査:未実施
日常点検:目視による日常点検は実施していたが、高所のタイルの状態については把握することが困難であった。

  • 事故状況
    2016年(平成28年)7月7日、地上9階建てビルの6階部分から、せっ器質の2丁掛けタイルとモルタルが剥がれ、1階店舗のビニール製の庇を突き抜けて歩道に落下しました。剥がれ落ちたタイルとモルタルは、庇の近くにいた被害者に当たり、被害者は頭部を裂傷するケガを負いました。
  • 事故原因
    2丁掛けタイルは経年劣化で剥落し、また外壁は、直射日光、風雨、温度変化などの環境要因の影響で強度が低下しており、事故につながったものとみられます。
【事例2】二丁掛けタイル落下事故(大阪府) 事故状況(写真)とタイル、モルタルの剥離状況(説明図)

出典:建築物事故内容報告事例(No.2:大阪府内外壁落下事故)|東京都都市整備局

【事例3】店舗外壁モルタル落下事故(北海道)

被害の程度:重傷者1名、軽傷者1名 定期検査:未実施 日常点検:未実施

  • 事故状況
    2017年(平成29年)2月4日、北海道内の2階建て店舗の外壁の一部(重さ数十㎏)が、約2メートルの高さから落下して、通行人に直撃しました。外壁は、木材の下地に鉄板下地が釘で留められ、その上にモルタルを塗った構造でした。
  • 事故原因
    この店舗の周辺には水辺があり、経年劣化によって鉄板下地が腐食、鉄板から釘が抜けて、鉄板下地がラスモルタルとともに剥落したと考えられています。
【事例3】店舗外壁モルタル落下事故(北海道) 事故状況(写真)とタイル、モルタルの剥離状況(説明図)

出典:建築物事故内容報告事例(No.7:北海道内外壁落下事故)|東京都都市整備局

【事例4】内屋根破風落下事故(茨城県)

被害の程度:重傷1名 定期検査:3年に1度、目視のみの定期検査を実施 日常点検:未実施

  • 事故状況
    2017年(平成29年)3月17日、茨城県内の体育館の屋根の破風の一部が落下し、通行人の頭部に当たりました。
  • 事故原因
    屋根の劣化で雨水が侵入したことにより、錆びが発生し、その錆によってメタルラスシートが固定できなくなり、モルタルと一緒に剥がれ落ちてしまったとみられます。
【事例4】内屋根破風落下事故(茨城県) 事故状況(写真)と破風下構造体、メタルラスシート、モルタルの状況(説明図)

出典:建築物事故内容報告事例(No.9:茨城県内屋根破風落下事故)|東京都都市整備局

外壁タイル落下事故の事例から見る、外壁調査の重要性

前述のとおり、建物の外壁は常に風雨や紫外線にさらされているため、建物のなかでも特に劣化しやすい箇所です。外壁が劣化すると、まず変色や色褪せが起きて建物の見た目が悪くなり、さらに劣化が進むと外壁の防水効果が失われていきます。

上記に加え、ひび割れなども重なると雨水が侵入しやすくなり、下地にも影響がおよび、建物の耐久性の低下につながります。下地の痛みが進むと塗膜剥離によっても劣化が進み、外壁の落下事故につながることもあります。場合によっては落下した外壁材で死者や重傷者が出ることもあり、大変危険です。

そのため、外壁の劣化や重大な事故を未然に防ぐためには、常日頃から外壁の目視点検を習慣化するとともに、専門家による定期的な調査の実施が必要です。

建築基準法における12条点検について

建築基準法の第12条では、建物の安全性を確保する目的で、不特定多数の人が利用する建物の所有者、または管理者に対して建物の点検が義務付けられています。この法令は「12条点検」と呼ばれ、次の4つに関する点検や報告の実施が義務付けられています。

建築基準法は2008年(平成20年)に改正され、外壁調査については1~3年ごとに実施する「目視および部分打診調査」と、10年ごとに実施する「全面打診等調査」が義務付けられました。

なお、12条点検の実施者は、有資格者(一級建築士、二級建築士)、または法定講習を修了して国土交通大臣から資格証を公布された者に限定されます。自社に有資格者がいない場合には、専門業者に調査を依頼しなければなりません。

ビューローベリタスのサービス

ビューローベリタスでは、外壁タイルの落下事故を予防するための「外壁打診等調査」や「劣化診断調査」をはじめ、さまざまなサービスを提供しています。年間12,000件の検査実績(2022年1月~12月実施分)、専門知識を持つ調査員が、既存建物の法定点検をサポートします。

外壁調査には、打診調査、赤外線調査、ひび割れ調査などの方法がありますが、建物の形状や立地条件に応じて、適した調査方法を検討する必要があります。外壁タイルの管理や保全に関するお悩みがある場合には、ビューローベリタスにぜひご相談ください。

まとめ

外壁の劣化による重大な事故を未然に防ぐために、定期的な外壁調査やメンテナンスはとても大切です。また、外壁調査は建築基準法の第12条でも義務付けられています。
ビューローベリタスジャパンは建築物の検査をはじめ、さまざまなサービスを日本全国で展開しています。外壁調査においても多くの実績があるため、ぜひ一度お見積りをご依頼ください。

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