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天井落下の危険性~落下の被害や原因・対策~

2025/03/12

建物の耐震性を向上させたい場合、まず柱や壁、床、屋根などに着目する方が多いのではないでしょうか。そうした主要構造部を見直すことはもちろん大切ですが、天井や照明といった非構造部材にも注目する必要があります。

実際に、過去の大規模な地震では天井落下による被害が報告されており、天井の安全性の向上は、建築物の所有者や管理者の責務となっています。

本記事では、天井落下の危険性に注目し、天井落下による被害の実態や天井が落下する要因、国土交通省が示す天井落下対策、天井の安全性を見直す手順を解説します。

地震で大きな被害:天井落下の危険性

地震の多い日本では、大規模な地震が発生するたびに天井落下の危険性が注目されてきました。平成13年の芸予地震では天井や間仕切り壁の脱落により負傷者が発生し、平成15年の十勝沖地震では空港出発ロビーの吊り天井が脱落、平成17年の宮城県沖地震ではスポーツ施設の天井が落下する被害が出ました。

地震による天井落下で被害が特に大きかったのが、平成23年の東日本大震災での被害です。震源地である東北地方を中心に広範囲で建物の天井が被害を受け、多くの方が利用する体育館や劇場、商業施設などの天井も落下しました。

この地震では、新耐震基準施行以降に建てられた建築物でも天井が脱落する被害が発生しています。天井脱落などによる人的被害は、死者5名、負傷者72名以上、被害件数は約2,000件にのぼり、天井の安全性がより注目されることとなりました。

また、地震以外でも、経年劣化などを原因として天井が落下する事故が発生しており、施設を安全に使用するためには、施設の管理者・所有者は天井が落下しないよう、対策を講じる必要があります。

なぜ天井は落下したのか

天井はなぜ地震により大きな影響を受けたのでしょうか。天井落下の原因の一つが、天井の構造にあります。

建造物の多くで「吊り天井」が用いられています。そして吊り天井では梁などから吊り部材を用いた骨組みで天井板を吊り下げており、その構造から横揺れに弱いこと特徴です。また、湿気の多い空間では錆びや腐食で部材が劣化しやすくなります。

地震の揺れの振動が伝わりやすい吊り天井が梁や窓際に衝突し、その衝撃で落下したのです。

国土交通省の天井落下対策

これまでの地震などによる天井落下事故をふまえ、平成26年、国土交通省の天井脱落対策に係る技術基準を定める告示が施行されました。

技術基準では、人が日常立ち入る場所に設置されている吊り天井のうち、以下の3つの基準を満たすものを「特定天井」に指定しています。

<特定天井の基準>

  • 天井の高さが6m超
  • 水平投影面積が200㎡超
  • 単位面積重量が2kg/㎡超

特定天井は、脱落によって大きな危害を生ずる恐れがあるとされる天井であり、その新設や増設などには規制が設けられています。ここでは、特定天井への規制の概要を2つに分けて解説します。

学校の非構造部材検査における特定天井に準ずる天井

建築基準法にて定める特定天井のほかに、文部科学省では屋内運動場等(屋内運動場、武道場、講堂、屋内プール)において天井高さ6m超、水平投影面積200㎡超のいずれかに該当する吊り天井を、特定天井に準ずる天井として扱うこととし、構造の専門家も含めて対策の検討を行うことを求めています。

■新築・増改築に技術基準を設定

建築物に新たに特定天井を設ける場合、または特定天井を有する既存建築物の増改築を行なう場合、技術基準に基づき、構造耐力上安全な構造とするための設計が必要です。

設計は仕様ルート、計算ルート、大臣認定ルートの3つのルートが設けられており、いずれかのルートを適用して耐震性を検証します。

設計ルート 概要
仕様ルート 天井の単位面積質量が20kg/㎡以下の場合、耐震性を考慮した天井の仕様に適合することで検証
計算ルート 多層建築物や体育館など仕様を適用しにくい場合、天井の耐震性などを構造計算で検証
大臣認定ルート 音楽ホールなど大空間で建物の躯体や天井が特殊な場合、個々の建築物の特性に応じ、時刻歴応答解析などで天井の耐震性などを検証

各ルートの詳細な設計方法や設計例については、一般社団法人建築性能基準推進協会が公表している「建築物における天井脱落対策に係る技術基準の解説」に記載されています。

■既存建築物へ落下防止装置設置を検討

法令の改正前に建築された既存不適格建築物では、一定規模以上の増改築を行なう場合に、新築時の基準に適合させるか、以下のような落下防止措置を講じる必要があります。

天井の落下防止措置

  • ネットの設置
  • 天井をワイヤーなどで吊る

なお、落下防止措置部材を天井面の下部に設置するか、天井面の上部に設置するかで、設計上の注意すべき事項が異なります。詳細は一般社団法人建築性能基準推進協会が公表している「建築物における天井脱落対策に係る技術基準の解説」をご確認ください。

天井の安全性を見直す手順

天井の安全性の見直しは以下の4つのステップで行ないましょう。それぞれの内容を解説します。

■STEP1:専門家に相談する

天井の安全性を確認するには専門的な知見が不可欠です。診断会社や建築士に、天井の安全策について相談しましょう。相談にあたっては設計図書などの資料の提示を求められる場合があるため、関係資料を用意しておくとよいでしょう。

■STEP2:調査実施

相談内容に基づき、専門家などが調査を実施します。必要に応じ、天井以外の構造の耐震性能も検証します。
調査にあたっては、調査実績が豊富な信頼のおける調査機関を活用することをおすすめします。

■STEP3:対策を決定する

調査結果に基づいて対策を検討します。主に以下のような対策が挙げられます。専門家と相談しながら建築物の状況や予算をふまえて方針を決定しましょう。

対策 概要
天井の撤去 既存の天井を撤去し、撤去前の音環境や温熱環境を考慮したうえで、直天井で対応する
天井を撤去し耐震天井を新設 既存の天井を撤去して法に適合する耐震天井を新設する。必要に応じて吊りもとからの詳細な構造検討が必要
天井を撤去して軽量柔軟な天井を新設 既存の天井を撤去して軽量柔軟な天井を新設する
天井を撤去し建物と天井を一体化させる 既存の天井を撤去し、建物と天井を一体化して、剛な天井に変更する
落下防止措置の実施 天井面の下部にネットなどを設置するか、天井面の上部にワイヤーなどを設置して、天井が損傷しても落下しないような措置を講じる

■STEP4:必要な工事を実施する

対策方針に基づき工事を発注します。施工完了後は定期的に調査を実施し、安全性に問題がないか確認しましょう。

特定天井の点検はビューローベリタスへ

大規模な地震では、建築物の倒壊や構造の損傷だけでなく、天井材や照明器具の落下、内装材・外壁材の破損が、人的災害につながります。天井は非構造部材の一つであり、これまで、天井の落下による死傷者も発生しています。

建物の耐震性能が高くても非構造部材の落下などで被害がでる可能性があります。建物の安全性を保つために非構造部材を法に基づいて新築・増築・改修し、定期的に点検を実施しましょう。

ビューローベリタスジャパンでは、天井をはじめとした非構造部材の耐震点検を実施しています。年間検査実績12,000件にのぼる当社には検査員教育を受けた専門の資格者が多数在籍しており、お客様の建物の安全性をくまなくチェックしています。

建築年が古く天井の安全性に問題がある、天井を定期的に点検したいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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