マンション老朽化が抱える課題と解決策
マンションは経年により劣化するため、適切な時期に点検・修繕が欠かせません。マンションの劣化を放置すると、住民の生活環境が悪化するだけでなく、外壁タイルの剥離による被害など、第三者へも悪影響をもたらします。マンションに住んでいる方やマンションを管理している方は、マンション老朽化の問題を知り、老朽化を防ぐ施策を実行しましょう。
本記事では、マンション老朽化が引き起こす問題点を明らかにしたうえで、老朽化してしまったマンションで取りうる選択肢、マンション老朽化を防ぐ方法を解説します。
全国で問題となるマンションの老朽化
国土交通省「マンションを取り巻く現状について」によると、2021年末時点で、築40年以上の高経年マンションは全国に115.6万戸あります。これは、マンションストック総数の約17%を占める値であり、今後も高経年マンションは増え、2041年末には425万戸を超えると推測されています。
同資料では、高経年マンションは、劣化により生命や身体、財産に影響する問題を抱えているマンションが多いことが示されています。
適切な修繕を行なっていてもマンションは緩やかに劣化してくため、老朽化したマンションにどう対応し、安全に使用できる期間を延ばしていくかが課題です。
参考:国土交通省「マンションを取り巻く現状について」
老朽化したマンションで発生する問題
老朽化したマンションで発生し得る問題には以下のようにさまざまなものがあります。
- 外壁等の剥落、鉄筋の露出・腐食など共用部の老朽化
- 耐震性能に不安がでる
- 設備が老朽化し時代に合ったニーズに対応できなくなる
- 修繕計画に対し積立金が不足することにより修繕積立金・管理費が増える
- マンションの資産価値が下がる
- 入居希望者がいなくなり、空室が増加する
老朽化を防ぐためには適切な修繕が欠かせませんが、入居者が減ると修繕費の負担がより大きくなります。修繕費の不足により老朽化を防げず、さらに入居者が減るという悪循環に陥らないためにも、早期の対応が求められるといえます。
老朽化したマンションに対する選択肢
老朽化してしまったマンションに対する選択肢は、以下の2つです。取るべき手法はマンションの状態などによって異なります。マンションに合わせて最適な手法を選択しましょう。
①老朽化した箇所を修繕・交換する
外壁塗装、設備の交換などを行ない、マンションの状況を回復させる方法です。劣化診断などを行ない、優先順位をつけて緊急性の高い修繕から実施しましょう。大規模修繕を行なえば、修繕が必要な箇所を一度に直せるため効率的です。修繕・交換では多額の修繕費用をどう工面するのかが課題となります。修繕費用を確実に支払えるよう、長期的な修繕計画を立て、修繕費を積み立てる必要があります。
②建て替える
修繕による回復が見込めない場合は建て替えを検討します。ただし、建て替えの費用は高額であり、建物の状況により区分所有者の4/5または3/4の合意が必要となります。区分所有者の皆様の合意形成と建て替え事業が成り立つよう、さまざまな事業手法を検討する必要があります。国土交通省「マンション建て替え等実施状況」によると、2024年に建て替えを行なったマンションは約12戸のみにとどまっています。
マンションの老朽化を防ぐために
マンションの老朽化を防ぐために、以下の3つのポイントを押さえましょう。
①長期修繕計画を立てて確実に修繕を実施する
長期修繕計画とは、将来予想される修繕工事を計画したものです。長期修繕計画を立てることで、修繕が必要な箇所を正確に洗い出して対処できます。また、修繕計画立案時に算出された修繕費用の目安は、後述の修繕積立金算出にも役立ちます。長期修繕計画は定期的に見直し、必要な修繕があれば適宜盛り込みましょう。
②法定点検と任意点検を適切に行なう
外壁調査や劣化診断調査などを定期的に実施し、修繕が必要な箇所を早期に発見しましょう。劣化がひどくなるまえに修繕を行なえば、修繕費用を抑えることができます。建物の点検には、法定点検(特定建築物定期調査・外壁打診等調査、建築設備定期検査など)と任意点検(劣化診断調査など)の2種類があります。法定点検を確実に実施するとともに、任意点検を随時行い、より早く確実に修繕できるよう体制を整えましょう。
定期報告制度
建築基準法では、建築物が適法な状態で維持管理されているかを確認するため、定期報告制度を設けています。制度に基づき、建物の所有者や管理者は専門の技術者に法定点検を依頼して、建物の状況を調査・検査し、特定行政庁に報告しなければなりません。定期報告を怠った場合は罰則規定があります。法定点検を遵守することで建物の老朽化を防ぎ、定期的な劣化の進行を確認することで長期修繕計画を見直すきっかけにもつながります。
外壁打診等調査
外壁打診等調査は、建築基準法に定められた調査で、法定点検に含まれた検査内容の一つです。特定建築物定期調査により異常が認められた建築物や、竣工後10年を超える建築物などについては、打診調査や赤外線調査などを定期的に行ない、報告する必要があります。
また、任意点検として劣化診断調査などを行なうと、修繕箇所の早期発見・予防が可能になります。
③修繕積立金を見直す
老朽化を防ぐことができない要因の一つが、修繕費の不足です。実際に築年数が増えるにつれて修繕の箇所や規模が大きくなり、修繕費が支払えなくなるケースがあります。老朽化対策には適切な修繕費の積み立てが必要です。長期修繕計画に基づいて積み立てられる修繕費を修繕積立金といいます。長期的にみて、現在支払っている修繕積立金で修繕費をまかなえるか見直しましょう。
まとめ
全国でマンションの老朽化が課題となっており、早期対策が求められています。老朽化したマンションには修繕、建て替えなどの対処法がありますが、どの手法でも多額の費用が必要になることが課題です。修繕積立金が足りずに修繕できない、修繕箇所が多すぎて対応できない、といったことがないよう、適切なタイミングで修繕を行ないましょう。
また、修繕の時期や箇所を適切に把握するためには、定期的な調査が欠かせません。ビューローベリタスジャパンでは、建物の安全性を維持するための調査や法定検査のほか、外壁の全面打診調査等に対応しています。ぜひお気軽にご相談ください。