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寿命が近づくビルの対処法とは~建て替えまたはリノベーション・修繕~

2025/07/18

どのようなビルも劣化し、やがて寿命を迎えます。寿命を迎えたビルでは不具合が発生しやすくなり、維持管理費が膨らんでしまうでしょう。ビルが寿命を迎えたときの対処法を、早めに検討しておくことが大切です。

今回は、寿命が近づくビルへの対処法として、「建て替え」と「リノベーション・修繕」の2つを解説します。ビルの状況や将来性などによって異なるため、本記事をご参考に対処法をご検討ください。

ビルの寿命は価値的・物理的・経済的に判断する

ビルの寿命は「価値的寿命」「物理的寿命」「経済的寿命」の3つを基準に考えるとよいです。

価値的寿命 耐用年数(減価償却期間)による寿命(国税庁による)
物理的寿命 構造体や設備の劣化による寿命(技術的な判断)
経済的(社会的)寿命 利用価値や地域性による寿命(都市計画)

価値的寿命とは、国税庁が定める耐用年数に基づく寿命です。鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)・鉄筋コンクリート造(RC造)のビルの場合、耐用年数は31~50年と定められています。ただし、耐用年数は会計事務で用いられる基準であり、耐用年数を過ぎてもすぐに使用が困難になるというわけではありません。

物理的寿命は、構造体や設備の劣化による寿命です。定期的な点検・検査により寿命が判断されます。物理的寿命を迎えた建物には、大規模な修繕や建て替えなどの対応をとる必要があります。

経済的(社会的)寿命は、利用価値や地域性による寿命です。近隣の大規模商業ビルが建てられたことによりそのほかの商業ビルの価値が低下する、などが経済的寿命にあたります。

これら寿命を迎えたビルには、建て替えやリノベーション・修繕が求められます。

関連記事:ビルの老朽化~劣化・損傷の具体例、対処法を紹介~

老朽化したビルへの対処法①建て替える

老朽化したビルへの対処法として、ビルを建て替えるメリット・デメリットや工期、注意点などを解説します。

◇ビルを建て替えるメリットとデメリット

ビルを建て替える最大のメリットは、新築ビルとして利用できる点にあります。建築基準法等によって一部制限を受ける可能性がありますが、階数や間取り、利用する設備などを自由に設定できるため、収益化の改善にもつながるでしょう。

ただし、建て替えのデメリットとして、多大なコストがかかる点が挙げられます。建築費用だけでなく既存ビルの解体費用なども必要になるため、しっかりとした資金計画を立てなければなりません。また、既存ビルで賃貸収入を得ている場合は、工事期間中の収入減少を補てんする方法を考える必要があります。

◇ビル建て替えにかかる工期

建て替えは5~10年かけて進めることが一般的です。資金の準備や立ち退きの交渉など、工事期間以外にも時間がかかるため、早めに準備を進めましょう。

◇ビル建て替えする際のポイント

ビルに賃借人がいる場合、建て替え時に立ち退きを依頼する必要があります。立ち退きには正当事由が必要ですが、建て替えは立ち退きの正当事由にはなりません。ビルの建て替えによる立退交渉は時間がかかるケースが多いです。

さらに、建築基準法等の規制や制限を調べておくことが重要です。新たにビルを建てる際には、法改正や都市計画・用途地域の変更に対応しなければなりません。場合によっては既存のビルよりも規模縮小が必要になったり、再建築不可物件で建て替えができなかったりする場合があります。建て替えができない場合は、リノベーションや修繕を検討しましょう。

老朽化したビルへの対処法②リノベーション・修繕

続いて、老朽化したビルへの対処法として、リノベーション・修繕する場合のメリット・デメリット、工期などを解説します。

◇ビルをリノベーション・修繕するメリットとデメリット

ビルのリノベーション・修繕では、基本的に既存の構造をそのまま活用するため、建て替えより費用を安く抑えられ、工期が短くなります。また、再建築不可物件など、現在の建築基準法で建て替えができない物件でも適用できます。

ただし、リノベーション・修繕は構造をそのまま残すため、建物によっては可能な工事に縛りが出てしまう点がデメリットです。間取りの変更や設備の導入も建て替えのような自由度はありません。

また、旧耐震基準で建築されたビルの場合はリノベーション・修繕にあたって耐震補強工事が必要になり、工事費が増える可能性があります。修繕方法によっては減価償却費として計上できる期間に影響が出るため、会計処理についても確認しておきましょう。

◇ビルのリノベーション・修繕にかかる工期

工期はリノベーションの規模によって異なります。目安は、3か月~1年程度です。

◇ビルをリノベーション・修繕する際のポイント

建て替えと同様、リノベーション・修繕する場合も、建築基準法等の規制や制限を調べておくことが重要です。また、リノベーションの規模が大きい場合に多額の立退料が発生したり、古い物件で工事開始後に予期せぬ不具合が発生したりする可能性があるため、余裕をもって予算組みをする必要があります。

さらに、リノベーション・修繕を成功させるには、需要を押さえた構造・設計にしておくことが大切です。その地域でどのようなビルが求められているのかをしっかりとリサーチしたうえで工事に取りかかりましょう。

建て替えとリノベーション・修繕、どちらを選ぶべきか

建て替えとリノベーション・修繕のどちらを選ぶべきか、はケースによって異なります。ここでは双方に向いているケースをご紹介します。

◇建て替えが向いているケース

以下のようなケースでは建て替えが向いています。

  • 基礎部分が傷んでいる
  • 修繕を必要とする箇所が多い
  • 断熱性、耐震性などを高めたい
  • 相続税を節税したい
  • 法定耐用年数を過ぎている

建て替えには多額の費用がかかるため、費用に見合うだけの効果があるかをしっかりと検証する必要があります。ビルを点検・検査し、必要な工事を洗い出したうえでリノベーション・修繕と比較してメリットがあるかを検討しましょう。

◇リノベーション・修繕が向いているケース

以下のようなケースはリノベーション・修繕が向いています。

  • 基礎部分がまだ傷んでいない
  • 費用を抑えたい
  • 建て替えができない

リノベーション・修繕する場合は、基礎部分が傷んでいないことを必ず確かめましょう。基礎部分が傷んでいると、リノベーション・修繕してもすぐに建て替えが必要になってしまいます。リノベーション・修繕によって建物の寿命がどれくらい延びるかも把握しておきましょう。

点検・検査で現状を把握しビルの今後を考える

ビルの今後を考えるために、現状を正しく把握することが大切です。ビルを点検・検査するメリットや実施すべき内容を解説します。

◇ビルの点検・検査を実施するメリット

ビルの安全性を確保するために、国はビルのオーナーや管理者に対して点検や維持管理を義務付けています。点検・検査により適法の状態を維持することで、ビル利用者に安心感を与えることができます。

また、点検で修繕が必要な箇所を早期に発見できれば、修繕範囲や修繕費を最小限に抑えられます。点検・検査の結果から、ビルを建て替えるかリノベーションするかについても判断しやすくなります。

◇ビルで実施すべき点検・検査

ビルで実施すべき点検・検査は法定点検と任意点検に分けられます。

関連記事:ビルオーナーが実施すべき点検とは~法定点検と任意点検を解説~

ビルの法定点検

法定点検は法律で義務付けられている点検であり、適切に実施されない場合は罰則が科される場合があります。法定点検には、以下のようなものがあります。

法定点検 概要
12条点検(建築基準法第12条定期報告) 国や地方自治体が指定する建築物や付帯設備に関して、一級・二級建築士や特定建築物調査員などに依頼して状況を調査し、特定行政庁に報告する
防災管理点検
防火対象物点検
防災管理者を選任しているか、避難階段に障害となるものが置かれていないか、避難訓練が実施されているかなどを定期的に点検する
電気保安点検(自家用電気工作物法定点検) 受変電設備や負荷設備など、ビルの自家用電気工作物について定期的に点検を実施する

 

ビルの任意点検

法定点検に加えて任意点検を実施することで、日常的な不具合や経年劣化の進行状況などが早期に把握できるようになります。ビルの任意点検には、以下のようなものがあります。

任意点検 概要
劣化診断調査  躯体や屋上、塗装など建物全体の状態をチェックする。修繕の優先順位が正しく判断できるようになり、建物の安全性が確保できる
日常点検 建物が安全な状態にあるか、目視などで日常的に点検する
遵法性調査 建築基準法などの法令に既存建築物が適合しているかどうかを調べる

 

まとめ

ビルの寿命は価値的・物理的・経済的な観点から考えます。価値的寿命や経済的寿命は一般的な情報から判断できますが、物理的な寿命は専門的な技術による判断が必要です。

ビルを建て替えるべきか、リノベーション・修繕すべきかを正しく判断するためにも、信頼できる機関に点検・検査を依頼して現状を把握しましょう。

ビューローベリタスジャパンでは、法定点検である12条点検をはじめとした、ビルの各種点検・検査を行っています。専門知識をもった資格者が多数在籍しており、ビルの状態を正確に把握することができます。ぜひお気軽にご相談ください。

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