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非常用発電機の負荷試験とは~点検の概要と試験内容~

2025/09/10

非常時にさまざまな設備に電力を供給する非常用発電機は、欠かせない重要な設備です。確実に稼働できるよう、消防法や電気事業法などで定期的な点検を実施することが義務付けられています。

非常用発電機に求められる点検のひとつが「負荷試験」です。一定の負荷をかけて稼働させることで、発電機が非常時に負荷がかかった状態で正常に電力を供給できるかを確認します。

本記事では、非常用発電機に求められる点検の概要を解説し、負荷試験の内容や方法、ポイントを解説します。

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非常用発電機の定期的な点検が義務付けられている

非常用発電機は定期的に点検することが法律によって義務付けられています。点検の内容は、消防法、電気事業法、建築基準法によって異なり、本記事でとりあげる負荷試験は、消防法に基づくものです。

定期的な点検を怠ると、非常時に設備が使えない可能性があるだけでなく、漏電や発火などの二次災害を引き起こす可能性があります。法律に基づき、適切に点検を実施しましょう。

ここでは、消防法、電気事業法、建築基準法における非常用発電機の点検内容を解説します。

参照:e-Gov 法令検索 消防法(第十七条の三の三)電気事業法(第四十二条)建築基準法(第十二条)

◇消防法に基づく点検

消防法に基づく点検では、電力量や設備稼働可否を確認します。点検対象は、延べ面積が1,000㎡以上の「特定防火対象物」に設置されている消防用設備および動力源となる発電機です。

※ホテルや百貨店など不特定多数の人が利用する建物、あるいは病院や社会福祉施設、幼稚園など、火災が発生した場合に、自力での避難が困難な利用者が多い施設等

主な点検内容

  • 原動機・交流発電機など各種部品の状態に問題はないか
  • 制御装置・始動装置に問題はないか
  • 運転の際の電圧・電流・周波数・回転数などに問題はないか

消防法に基づく点検には、6か月に1回実施する機器点検と、1年に1回実施する総合点検があります。点検はその施設に選任された電気主任技術者と防火管理者の立会いのもとに行うことが望ましいです。

◇電気事業法に基づく点検

電気事業法に基づく点検では、安全に送電できるかを確認します。点検対象は出力10kWA以上のディーゼルエンジン式非常用発電機と、全てのガスタービン式非常用発電機(出力を問わず)です。

主な点検内容

  • 自動起動・自動停止の機能は正常に動作するか
  • 内部蓄電池からの漏れは発生していないか
  • 約5分間の空ぶかしによるエンジン試運転に問題はないか
  • 部品の接続箇所や地面との接地面などに問題はないか
  • 接続と絶縁抵抗値の測定結果に問題はないか

電気事業法に基づく点検には、1か月に1回実施する月次点検と、1年に1回実施する年次点検があります。また、点検は電気主任技術者の監督下で実施しなければなりません。

◇建築基準法に基づく点検

建築基準法に基づく点検では、建築設備が常に適法かつ正常な状態を維持できているかを確認します。点検対象は特定行政庁が指定するものです。

主な点検内容

  • 建築物・建築設備・敷地などに違法性はないか
  • 非常用発電機の蓄電池触媒栓の有効期限は切れていないか
  • 非常用発電機の蓄電池から液漏れは発生していないか
  • 非常用の照明装置・排煙設備が正常に動作するか

建築基準法に基づく定期点検の頻度は施設によって異なり、おおむね6か月~1年に1回となっています。点検時期を誤らないよう注意しましょう。なお、点検は一級・二級建築士や建築設備検査員などの有資格者が行なわなければなりません。

負荷試験とは

負荷試験は消防法で義務付けられている試験です。非常用発電機の点検には6か月に1回実施する機器点検と、1年に1回実施する総合点検がありますが、負荷試験は総合点検の点検項目となっています。

非常用発電機(自家発電設備)の点検基準

機器点検

6か月に1回実施

① 設置状況
② 表示
③ 自家発電装置
④ 始動装置
⑤ 制御装置
⑥ 保護装置
⑦ 計器類
⑧ 燃料容器等
⑨ 冷却水タンク
⑩ 排気筒
⑪ 配管
⑫ 結線接続
⑬ 接地
⑭ 始動性能
⑮ 運転性能
⑯ 停止性能
⑰ 耐震措置
⑱ 予備品等
総合点検

1年に1回実施

① 接地抵抗
② 絶縁抵抗
③ 自家発電装置の接続部
④ 始動装置
⑤ 保護装置
⑥ 負荷運転または内部観察等
⑦ 切替性能

 

負荷試験は、単に試験対象の発電機の始動を確認するだけでなく、非常時に消防設備を稼働させることができる電力を供給できるか確認します。また、併せて排気管内のたまった未燃焼物質を除去し、故障や発火の原因になることを防ぎます。

負荷試験の重要性

非常用発電機は普段使用しないため非常時に本来の能力を発揮できるか不明です。よって、正しく能力を発揮できるかを、定期的に確認しておく必要があります。非常時に動かなければ、避難消火のための設備が動かず逃げ遅れる、スプリンクラーが稼働せず延焼するなど、非常電源としての役割を果たせない事態が発生する可能性があります。

このような事態を防ぐためにも、負荷試験を実施するすることが求められています。

負荷試験では、発電機に必要最低限の負荷をかけ、正常に発電できるかの確認をします。普段動かさない設備だからこそ、その性能が正しく維持されているかは見た目では判断できません。負荷をかけ、必要な電力が必要なだけ発電されているかを確認することが大切です。

非常時のリスクを低減させるためにも、検査機関に点検を依頼して、設備が正常に動くかどうかを定期的に確認しましょう。

負荷試験の種類

負荷試験には、実負荷試験と疑似負荷試験の2種類があります。施設の状況などをふまえて試験方法を選択しましょう。

◇実負荷試験

実負荷試験は、発電機と接続されている設備を実際に起動させ運転する方法です。運転時間は約30分程度、それぞれが問題なく稼働しているかを調べます。

実負荷試験では、発電機と接続している設備へ電力を供給できているかを確認するでことができるます。

ただし、試験中は施設の一部または全部の停電が必要です。停電できない施設では実負荷試験ではなく疑似負荷試験が有効です。

◇疑似負荷試験

疑似負荷試験は、発電機に専用の負荷装置を接続して運転する方法です。

疑似負荷試験では、施設を停電せずに実施でき、騒音が小さく近隣への心配が少ないです。また、発電機と負荷装置のみの試験のため、他の設備を止めることなく安全に作業を行うことができます。

ただし、発電機と接続されている設備の状態については、消防点検にて各種設備を確認する必要があります。

負荷試験の代替となる点検方法

平成30年に施行された消防法改正により、負荷試験の代替として「内部観察等」が追加されています。内部観察等による点検が、負荷試験と同水準以上の点検であることが検証データ等により確認されたためです。

内部観察等では、以下の項目を確認します。

① 過給器コンプレッサ翼およびタービン翼、排気管等の内部観察
② 燃料噴射弁等の動作確認
③ シリンダ摺動面の内部観察
④ 潤滑油の成分分析
⑤ 冷却水の成分分析

 

一定条件を満たせば負荷試験の周期が6年に1回へ

負荷試験は1年に1回行なうことが基本ですが、運転性能の維持に関する予防的な保全策が講じられている場合などでは、点検頻度を6年に1回へ変更できます。

予防的な保全策の概要

① 予熱栓、点火栓、冷却水ヒーター、潤滑油プライミングポンプがそれぞれ設けられている場合、1年ごとに動作確認を実施する

② 潤滑油、冷却水、燃料フィルター、潤滑油フィルター、ファン駆動用Vベルト、冷却水用等のゴムホース、パーツごとに用いられるシール材、始動用の蓄電池等について、メーカー指定の推奨期間内で部品を交換する

 

まとめ

非常用発電機は普段使用しないため、定期的に点検しなければ非常時に稼働できるかどうか判断できません。

負荷試験は、非常用発電機が正常に稼働するかを判断する重要な点検の一つです。消防法によって実施が義務付けられているため、非常用発電機を所有している方や管理している方は確実に点検を実施できるよう準備しておきましょう。

ビューローベリタスでは、消防法に基づく定期点検を実施しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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