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ドローンを活用した外壁調査とは~メリットや調査要件・課題などを解説~

2025/11/11

2022年1月18日付けで平成20年国土交通省告示第282号を一部改正し、打診以外の調査方法として、無人航空機(ドローン)による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものを明確化しました。外壁調査にドローンを用いることで、コストの削減や調査精度の向上などが期待されています。

参考:国土交通省「定期報告制度における外壁のタイル等の調査について

本記事では、ドローンによる外壁調査の概要やメリット・課題、従来の外壁調査との違いなどを解説します。今後外壁調査を予定している方は、記事を参考にしながらドローンの活用を検討してみてください。

関連サービス:12条点検(建築基準法第12条 定期報告)外壁打診等調査

2022年からドローンによる外壁調査が可能に

建物の定期報告(特定建築物調査)において、平成20年国土交通省告示第282号に基づき、竣工後、また外壁の改修から10年を経過した建築物の外壁のタイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く)については、全面打診などによる調査が求められています。

これまでは足場やゴンドラなどを利用した直接打診による調査が行われてきましたが、2022年の告示改正により、赤外線装置を搭載したドローンによる外壁調査が可能になりました。国土交通省では、「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」に基づき、ドローンの利活用を促進しています。

従来の外壁調査方法

外壁調査にあたり、従来は足場、ゴンドラ、ロープなどを使用した直接打診、地上から赤外線カメラで外壁を撮影し表面温度の差から外壁の状況を調べる方法により点検を実施していました。

従来の外壁調査方法

打診調査 赤外線調査
概要 足場、ゴンドラ、ロープを使用し、ハンマーで壁面を打診することで浮きや損傷を判定する 赤外線カメラによるサーモグラフィ画像を用いて壁面の浮きを判定する
メリット
  • 調査精度が高い
  • 調査対象に非接触で調査できる
  • 打診調査に比べてコストが低い
デメリット
  • コストが高い
  • 建物の構造によっては足場の設置やゴンドラなどの利用ができない
  • 天候によっては調査ができない
  • 打診調査に比べて調査精度が低い

従来の調査法に対して、ドローンによる外壁調査では足場を設置する必要がないため、コスト面のメリットが大きいことが特徴です。また、ドローンによる調査でも赤外線調査同様にサーモグラフィによって外壁の浮き部を判定しますが、壁面に対して水平、かつ近距離から撮影できるため、赤外線調査より精度の高い結果を得られる特徴があります。

ドローンによる外壁調査のメリット

ドローンによる外壁調査のメリットには、おもに「作業の安全性向上」「コスト効率アップ」「より精密な画像・データの取得」の3つがあります。以下、それぞれのメリットを解説します。

■作業の安全性向上

ドローンを利用すると作業員が高所で作業する必要性がなくなるため、転落リスクを抑えることができます。また、建物に接触せずに調査できるため、外壁に影響を与えることがありません。

■コスト効率アップ

従来の方法では外壁調査のために足場の設置などが必要でしたが、ドローンを活用した調査では足場が不要なため、点検コストを大幅に削減可能です。

また、建物の規模によっては1日で調査を終了でき、人件費も削減できるでしょう。足場の設置などにより周囲へ騒音で迷惑をかけることがなくなるため、安心して調査を行えます。

■より精密な画像・データの取得

ドローンを用いた赤外線調査では、目視では判別できない外壁内部の状況を確認できます。建物の所有者や管理者がデータをリアルタイムで確認でき、透明性の高い調査結果を提供できる点がメリットです。

ドローンに高性能の赤外線カメラを搭載することで、より詳しく調査することも可能です。今後、ドローンやカメラの性能がさらに向上すれば、調査分野における活躍の幅がさらに広がるでしょう。

ドローンによる外壁調査の要件

ドローンによる外壁調査では、調査精度を担保するため、以下のとおり調査の要件が定められています。より詳しい情報は、国土交通省「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」に記載されていますので参考にしてください。

ドローンによる外壁調査の要件

気象 平均風速5m/s未満、最低気温5度以上、日中の気温較差5度以上
晴れまたは晴れ時々曇りの場合調査可能
雨、曇り、雪のときは調査不可
撮影角度 仰角、水平角ともに30度以内での実施が望ましい
やむを得ない場合は45度程度まで許容
離隔距離 100mm四方を4画素程度で撮影できる距離
赤外線装置 最小検知温度差:0.1度以下(30度黒体において)
表示画素数:320×240画素程度以上
熱画像のデータ方式:温度情報が記録されており、温度分析が可能な状態であること

調査実施にあたっては、赤外線調査実施者、ドローン調査安全管理者、外壁調査実施者の連携による複数の実施体制を取り、各担当者が確認事項を整理しておく必要があります。事前調査でドローンを用いた赤外線調査の実施可能範囲を確認したうえで調査計画書を作成し、調査を進めましょう。

ドローンによる外壁調査が活躍するシーン

ドローンによる外壁調査は調査コストを抑えられるだけでなく、安全面でのリスク低減が見込まれるため、さまざまなシーンで実施されています。特に以下のようなシーンで導入が進んでおり、利活用の幅が増えていくでしょう。

  • 外壁の劣化状況の緊急調査(自然災害発生後など)
  • 建築基準法第12条に基づく定期点検
  • 修繕前調査

なお、ドローンによる外壁調査の精度は検査会社によって異なるため、検査会社を精査することが大切です。ドローンによる外壁調査の実績があるか、ドローンの操縦に長けた検査員がいるか、対応は丁寧かなどを調べて、信頼できる検査会社に外壁調査を依頼しましょう。

ドローンによる外壁調査の課題

メリットの多いドローンによる外壁調査ですが、以下のような課題が残されています。課題を理解したうえで安全に調査を実施できるよう準備を進めましょう。

  • 飛行規制により活用できないエリアがある
  • 安全対策
  • 適用が困難な外壁下地材への対応
  • 適用が困難な外壁下地材への対応

■飛行規制により活用できないエリアがある

小型無人機等飛行禁止法や航空法により、ドローンの飛行が制限される場合があります。ドローンによる外壁調査を考えている場合は、使用が可能か事前に検査会社へ問い合わせて確認しておくと安心です。

■安全対策

ドローンによる調査を実施する前には、安全性を確認する必要があります。安全装備類が適切に使用されているか、調査範囲内で電磁波の影響を受けないかなどを確認したうえで、実施の可否を判断しましょう。

また、ドローンは重く、制御を失って墜落すれば人や建物に損害を与える可能性があります。万が一のことを想定し、安全対策を十分に行える検査会社に依頼しましょう。

■適用が困難な外壁下地材への対応

金属光沢のあるタイルや、タイル表面に凹凸があるものなど、赤外線調査の実施が難しい外壁が存在します。

タイル下地の熱容量が小さい場合や、中空構造の板状材料など、下地材によっては技術的に赤外線調査が困難な場合もあります。加えて、浮き代ができないタイル先付けプレキャスト(PC)板は、浮きの検出が困難です。

そのため、ドローンによる外壁調査を行う際は事前調査で下地材を確認し、赤外線調査が可能かを判断することが大切です。

■気象条件によって予定どおり検査が実施できない場合がある。

上記の表(ドローンによる外壁調査の要件)に記載しているとおり、天候が優れない場合はドローンによる実施ができない場合があります。

予め天候による検査実施を見越し、検査予定日を複数設ける等事前に打ち合わせを行いましょう。

ドローンによる外壁調査の今後

ドローン技術や赤外線装置の技術は日々進化しており、今後さらなる精度の向上、作業範囲の拡大などが予想されています。

AI技術と組み合わせれば、撮影データの自動解析と修繕計画の立案が可能になるなど作業がより効率化されるでしょう。また、航空法の適用を受けないマイクロドローンの活用により、建築狭所空間での調査が可能になります。

ドローンは建築分野以外での活躍も期待されており、今後の技術開発が待たれるところです。最新の情報を入手しながら、適切にドローンを活用していきましょう。

まとめ

外壁調査はタイルの落下などによる事故を防ぎ、修繕コストを抑えるための大切な調査です。外壁調査にかかるコストや時間を大幅に削減したい場合は、ドローンを積極的に活用しましょう。ドローンによる調査を実施する際は、調査要件を確認し、実績豊富な検査機関を選ぶことが大切です。

ビューローベリタスジャパンには専門知識を持った資格者が多数在籍しているため、安全かつ正確な調査を実施可能です。

また、建築基準法第12条に基づく定期報告業務もうけたまわっております。ぜひお気軽にご相談ください。

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