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防災管理点検とは?法改正の内容もあわせて基本情報を詳しく解説

2022/5/17

防災管理点検とは、地震などによる災害の影響を最小限に抑えるために、大規模建築物に対して実施される点検です。点検対象となる建築物の所有者または管理者には、年に1回、防災管理点検と点検結果報告が義務付けられています。
建物の安全性を保つためにも、点検を確実に実施し、不備があれば確実に改善しましょう。

本記事では、防災管理点検の対象となる建物や、おもな点検項目、点検から報告までの流れを解説します。法改正により新たに定められた内容についても記載していますので、ぜひ参考にしてください。

防災管理点検とは?

防災管理点検とは、消防法第36条に定められている制度で、大規模建築物に対して建物の地震対策などの点検・報告を実施するものです。点検の対象となる建築物の所有者、または管理者は、年1回、防災管理点検を実施し、その結果を消防機関に報告しなければなりません。
点検・報告の基準となる日は、点検対象となる建築物の管理を開始した日です。基準日から1年以内に点検を実施する必要があります。

また、防災管理点検と似た点検に「防火対象物点検(消防法第8条の2の2)」とがあります。防災管理点検は、地震などの災害に備えるために実施されるものですが、防火対象物点検は、火災に備えるために実施されるものです。
防火対象物点検については、以下の記事を参照ください。

参考記事:消防法第8条の2の2 防火対象物点検の対象と点検項目について解説

防災管理点検・報告が必要な対象物

防災管理点検・報告が必要な「防災管理対象物」に該当するかどうかは、建物の用途や階数、規模によって決まります。点検の条件は複雑であるため、所有または管理する建物が防災管理対象物にあたるかどうか、早めに確認しましょう。

下図は、点検対象物の概要をまとめたものです。より詳細な条件については、東京消防庁のウェブサイトをご確認ください。

参考:東京消防庁「大規模地震等に対応した自衛消防力の確保に係る消防法令の改正

点検対象物の概要まとめ1
点検対象物の概要まとめ2

(東京消防庁「大規模地震等に対応した自衛消防力の確保に係る消防法令の改正」より抜粋)

防災管理点検の点検項目

防災管理点検は、平成19年(2007年)の消防法改正によって実施が義務付けられました。ここでは、法改正の内容と防災管理点検の点検項目について解説します。

平成19年6月の法改正で新たに義務化された内容とは?

近年相次いでいる大規模地震などに対応するため、平成19年(2007年)6月に消防法が改正され、平成21年(2009年)6月に施行されました。これにともない、防災管理に関する以下の4項目が新たに義務化されました。

  • 防災管理者の選任・届出
    防災管理者を選任し、消防機関に届出を行うことが新たに義務付けられました。防災管理者とは、消防計画を作成し、計画的に防災管理業務を実行する責任者です。防災管理者になるためには、防災管理業務を遂行できる管理的・監督的地位にある者が、防災管理講習を修了する必要があります。
  • 消防計画の作成・届出
    災害発生時の消防計画の作成と届出も、新たに義務付けられました。計画には、地震による家具や備品などの転倒・落下防止措置、通報連絡、避難誘導、防災訓練などに関する事項が盛り込まれています。
  • 自衛消防組織の設置・届出
    建物に関わる人が自らの力で防災活動を実施できるよう、自衛消防組織の設置と届出も義務付けられました。自衛消防組織は、初期活動や避難誘導、消防機関への通報などの業務を行ない、建物利用者の安全を確保します。
  • 防災管理点検・報告
    上記3項目について、防災管理点検資格者により点検を実施し、年に1回、消防機関に報告することが義務付けられました。なお、防災管理点検の対象物となっている建物が、防火対象物点検の対象でもある場合は、両方の点検基準をクリアしなければなりません。

防災管理点検のおもな点検項目

上記の消防法改正を受け、令和4年(2022年)3月現在、防災管理点検の点検項目は以下のとおりです。点検内容をもとに、適切に管理業務が行われているか確認しましょう。

  • 防災管理者を選任し、所定の届出をしているか
  • 防災管理者が作成した消防計画に基づき、適切な防災管理業務がなされているか
  • 自衛消防組織を設置し、所定の届出をしているか
  • 避難階段に避難の障害となる物がないか
  • 家具などの転倒、落下、移動防止措置は十分か
  • 1年に1回以上の避難訓練が正しく実施されているか
  • 十分な非常食などが備蓄されているか

点検は、防災管理者などの立会いのもと、防災管理点検資格者によって実施されます。消防計画などの書類も点検対象となっているため、点検に必要なものを点検資格者に確認しておくとよいでしょう。

防災管理点検・報告の具体的な流れ

実際の防災管理点検・報告は、以下の手順で実施します。

  • 防災管理点検資格者などに点検を依頼
    防災管理点検は有資格者でなければ実施できません。防災管理点検資格者などに点検の見積もりを依頼し、費用やサービス内容などを比較検討してから点検を依頼しましょう。
  • 防災管理点検資格者が、防災管理上必要な業務等が基準を満たしているかを確認
    消防法で定められた項目について、防災管理点検資格者が書類や現地の設備などを点検します。点検に必要なものを準備してから臨みましょう。
  • 防災管理点検資格者が作成した報告書を、管轄の消防署または消防出張所に提出
    防災管理点検は、点検だけでなく報告も義務付けられています。建物の所有者または管理者は、点検結果を消防機関に必ず提出してください。報告書に問題がなければ、報告書の副本が返却されるので、大切に保管しておきましょう。
  • 消防法令に適合していると判断された場合には、点検済証を1年間表示できる
    点検の結果、点検基準を満たしていると判断された建物には、1年間、各都道府県の消防設備協会が頒布する「防災基準点検済証」を表示できます。

また、防災管理点検で3年間消防法違反などがない場合、管轄の消防機関に対して特例認定の申請が可能です。検査を経て特例認定されると、防災管理点検・報告が3年間免除されるほか、「防災優良認定証」を表示できます。

なお、防災管理点検・報告の義務を怠ったり、適切に行わなかったりした場合には、30万円以下の罰金または拘留が科されます。建物の安全性を確保するためにも、計画的に点検を実施しましょう。

防災管理点検のご依頼

防災管理点検は、地震に対する大規模建築物の安全性を確保するために欠かせない点検です。点検は、年に1回実施する必要があります。点検対象となる建築物を所有、または管理している方は、点検時期を逃さないよう注意しましょう。

防災管理点検でお困りの際には、建築基準法第12条定期報告の年間検査実績9,800件*を持つビューローベリタスへお気軽にご相談ください。お見積もり依頼もこちらのページよりお送りください。

*2021年度実績

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