TOPページ > コラム・BV MAGAZINE> 東京都の定期報告(12条点検)の対象建物、報告時期、報告の流れ

東京都の定期報告(12条点検)の対象建物、報告時期、報告の流れ

2022/11/09
最終更新:2023/5/11

建物の安全性を確保するためには、定期的な調査が欠かせません。

建築基準法では、多くの人が利用する建築物の所有者・管理者に対して、定期的な調査と報告を義務付けています。調査対象や報告時期は管轄の特定行政庁によって異なるため、地域ごとに検査対象などの確認が必要です。

この記事では、東京都での定期報告の対象建物、報告時期、報告の流れを解説します。

定期報告(12条点検)とは

デパートやホテル、病院など、不特定多数の人が利用する施設では、建物の老朽化や避難設備の不備、建築設備の作動不良などにより、大事故が発生するリスクがあります。
これらの事故を未然に防ぎ、建築物の安全性や適法性を確保するために行われるのが、定期報告です。
建築基準法では、専門の技術者が建築物やその設備を定期的に調査・検査し、特定行政庁に報告することを義務としています。検査の内容や時期を知り、建物の適切な管理に努めてください。

実施すべき「定期調査・検査報告」とは、特定建築物定期調査、防火設備定期検査、建築設備定期検査、昇降機等定期検査の4つです。これら4つの定期検査は、建築基準法第12条に定められていることから、「12条点検」とも呼ばれます。
12条点検について、調査・検査ごとにそれぞれ簡単に解説します。

特定建築物定期調査

特定建築物定期調査では、建物の劣化損傷や防災上の問題点について、幅広く調査を実施します。調査対象となる建築物や報告を行うべき時期は、建築物の用途や規模、管轄する特定行政庁によって異なるため注意が必要です。

関連記事:
特定建築物とは? ~ 特定建築物に該当した場合にすべきこと ~
特定建築物定期調査とは? 具体的な調査項目について紹介します

防火設備定期検査

防火設備定期検査では、火災による被害を最小限にするために必要な、防火設備の設置状況と作動状況を確認します。検査の対象となるのは、防火扉や防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャーなどの防火設備です。

関連記事:
防火設備定期検査とは?誕生の背景や対象の建物、実施周期について

建築設備定期検査

建築設備定期検査は、建築物に付帯する設備の不具合による事故を防止することを目的としています。検査対象は、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水設備および排水設備です。

関連記事:
建築設備定期検査とは?検査内容や通知について、基本的な情報を紹介

昇降機等定期検査

昇降機等定期検査では、エレベーターやエスカレーター、小荷物専用昇降機などを対象に、安全性を検査します。国などが所有または管理する建築物を除く、すべての建築物の昇降機等に対して検査が義務付けられています。

【その他の調査】

実施すべき「定期調査・検査報告」に建築物・防火設備・建築設備・昇降機を挙げましたが、定期報告(12条点検)においては、外壁の全面打診等調査(10年毎)も義務化されています。外壁タイル等の建築物においては、併せてご確認ください。

関連記事:
外壁調査とは?必要性とおもな方法、調査会社を選ぶ際のポイントを解説
外壁調査の必要性と調査方法について

【東京都】特定建築物定期調査の対象となる建築物と報告時期

ここからは、特定建築物定期調査、防火設備定期検査、建築設備定期検査、昇降機等定期検査の、調査・検査対象と報告時期をそれぞれ解説していきます。
特定建築物定期調査の対象となる建築物と報告時期は以下のとおりです。

特定建築物定期調査の対象となる建築物と報告時期 ※2023年5月時点
用途 規模または階
いずれかに該当するもの
用途
コード
報告時期
劇場、映画館、演芸場 ・地階 ・F≧3階
・A>200㎡
・主階が1階にないもので A>100㎡(※)
※A≦200㎡の場合、階数が3以上のものに限る
11 11月1日から
翌年の1月31日まで
(毎年報告)
観覧場(屋外観覧席のものを除く。)、公会堂、集会場 ・地階 ・F≧3階
・A>200㎡(※)
※平家建ての集会場で客席および集会室の床面積の合計が 400㎡未満の集会場を除く
12
旅館、ホテル F≧3階かつA>2,000㎡ 13
百貨店、マーケット、勝馬投票券発売所、場外車券売場、物品販売業を営む店舗 F≧3階かつA>3,000㎡ 14
地下街 A>1,500㎡ 15
児童福祉施設等(注意4に掲げるものを除く。) ・F≧3階 ・A>300㎡(※)
※平家建てで床面積の合計が500㎡未満のものを除く。
21 5月1日から
10月31日まで
(3年ごとの報告)
病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設等(注意4に掲げるものに限る。) ・地階 ・F≧3階
・A≧300㎡(2階部分)
・A>300㎡(※)
※平家建てで床面積の合計が500㎡未満のものを除く。
旅館、ホテル(毎年報告のものを除く。) 22
学校、学校に附属する体育館 ・F≧3階
・A>2,000㎡
23
博物館、美術館、図書館、ボウリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場、体育館 (いずれも学校に附属するものを除く。) ・F≧3階
・A≧2,000㎡
24
下宿、共同住宅または寄宿舎の用途とこの表(事務所等を除く。)に掲げられている用途の複合建築物 F≧5階かつA>1,000㎡ 28
百貨店、マーケット、勝馬投票券発売所、場外車券売場、物品販売業を営む店舗 (毎年報告のものを除く。) ・地階
・F≧3階
・A≧500㎡(2階部分)
・A>500㎡
31 5月1日から
10月31日まで
(3年ごとの報告)
展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店 32
複合用途建築物 (共同住宅等の複合用途および事務所等のものを除く。) ・F≧3階
・A>500㎡
33
事務所その他これに類するもの 5階建て以上で、延べ面積が 2,000㎡を超える建築物のうち
F≧3階かつA>1,000㎡
34
下宿、共同住宅、寄宿舎(注意4に掲げるものを除く。) F≧5階かつA>1,000㎡ 40 5 月 1 日から
10 月 31 日まで
(3年ごとの報告)
高齢者、障害者等の就寝の用に供する共同住宅または寄宿舎(注意4に掲げるものに限る。) ・地階
・F≧3階
・A≧300㎡(2階部分)
41

注意

  • Fは階数を表し、F≧3階は3階以上の階、F≧5階は5階以上の階、地階は地下につくられた階のことを指します。表中の用途に利用する部分の床面積の合計が 100㎡を超えるものに限り、上記の条件が適用されます。
    ただし、用途に利用する床面積の合計が200㎡以上の場合、上記の条件が適用されるのは階数が3以上の建物に限られるためご注意ください。
  • Aは、表中の用途に利用する部分の床面積の合計です。
  • 高齢者、障害者等が就寝のために使用する場合を除き、共同住宅の住戸内は定期調査・検査の報告対象外です。
  • 高齢者、障害者等の就寝のために使用する建物とは、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等を指します。共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等の条件は以下のとおりです。
    ・共同住宅・寄宿舎
    サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホームに限る。
    ・児童福祉施設等
    助産施設、乳児院、障害児入所施設、助産所、盲導犬訓練施設、救護施設、更生施設、老人短期入所施設その他これに類するもの、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、母子保健施設、障害者支援施設、福祉ホームおよび障害福祉サービスを行う施設に限る。
  • 新築の建築物の場合、検査済証の交付を受けた直後の時期については報告不要です。詳しい用途・規模、初回免除等の考え方については、東京都都市整備局ウェブサイトをご覧ください。

出典:東京都都市整備局「定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧

【東京都】防火設備定期検査の対象となる建築物と報告時期

防火設備定期検査の対象となる建築物と報告時期は以下のとおりです。

防火設備定期検査の対象となる建築物と報告時期
報告対象設備 規模または階
いずれかに該当するもの
報告時期
随時閉鎖または作動できるもの(防火ダンパーを除く。) ・前述の特定建築物に該当する建築物に設けられるもの
・以下に掲げる用途A>200㎡の建築物に設けられるもの
1病院、診療所(患者の収容施設のあるものに限る。)用途コード 29
2高齢者、障害者等の就寝の用に供する用途(注意3)用途コード 49
前年の報告日の翌日から起算して、おおむね6ヵ月から1年の間隔を空けて、原則、以下の期間に報告
用途コード10番台
毎年4月から10月
用途コード20番台
毎年4月から11月
用途コード30番台
毎年4月から1月
用途コード40番台
毎年4月から9月

注意

  • Aは、表中の用途に利用する部分の床面積の合計です。
  • 高齢者、障害者等が就寝のために使用する場合を除き、共同住宅の住戸内は、定期調査・検査の報告対象外です。
  • 高齢者、障害者等の就寝のために使用する建物とは、共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等を指します。共同住宅、寄宿舎、児童福祉施設等の条件は以下のとおりです。
    ・共同住宅・寄宿舎
    サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホームに限る。
    ・児童福祉施設等
    助産施設、乳児院、障害児入所施設、助産所、盲導犬訓練施設、救護施設、更生施設、老人短期入所施設その他これに類するもの、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、母子保健施設、障害者支援施設、福祉ホームおよび障害福祉サービスを行う施設に限る。
  • 新築の建築物の場合、検査済証の交付を受けた直後の時期については報告不要です。詳しい用途・規模、初回免除等の考え方については、東京都都市整備局ウェブサイトをご覧ください。

出典:東京都都市整備局「定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧

【東京都】建築設備定期検査の対象となる建築物と報告時期

建築設備定期検査の対象となる建築物と報告時期は以下のとおりです。

建築設備定期検査の対象となる建築物と報告時期
報告対象設備 規模または階
いずれかに該当するもの
報告時期
換気設備(自然換気設備を除く。)*注意2 上記の特定建築物に該当する建築物に設けられるもの

毎年報告
前年の報告日の翌日から起算して1年を経過する日まで
遊戯施設等は6ヵ月ごとに報告

排煙設備(排煙機または送風機を有するもの)
非常用の照明装置
給水設備および排水設備( 給水タンク等を設けるもの)

注意

  • 高齢者、障害者等が就寝のために使用する場合を除き、共同住宅の住戸内は、定期調査・検査の報告対象外です。
  • 火気使用室、無窓居室または集会場等の居室に設けられた機械換気設備のみ、報告対象となります。
  • 新築の建築物の場合、検査済証の交付を受けた直後の時期については報告不要です。詳しい用途・規模、初回免除等の考え方については、東京都都市整備局ウェブサイトをご覧ください。

出典:東京都都市整備局「定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧

【東京都】昇降機等定期検査の対象となる建築物と報告時期

最後に、昇降機等定期検査の対象となる建築物などを紹介します。

昇降機等定期検査の対象となる建築物と報告時期
報告対象設備 報告時期
エレベーター
(労働安全衛生法施行令第 12条第1項第六号に規定するエレベーター(労働安全衛生法の性能検査を受けているもの)を除く。)
ただし、かごが住戸内のみを昇降するもの(一戸建て、長屋または共同住宅の住戸内に設けられた昇降機)を除く。 毎年報告前年の報告日の翌日から起算して1年を経過する日まで
遊戯施設等は6ヵ月ごとに報告
エスカレーター
小荷物専用昇降機
(昇降機のすべての出し入れ口の下端が当該出し入れ口が設けられる室の床面よりも50cm 以上高いもの(テーブルタイプ)を除く。)
遊戯施設等(乗用エレベーター、エスカレーターで観光用のものを含む。)

注意

  • 高齢者、障害者等が就寝のために使用する場合を除き、共同住宅の住戸内は、定期調査・検査の報告対象外です。
  • 新築の建築物の場合、検査済証の交付を受けた直後の時期については報告不要です。詳しい用途・規模、初回免除等の考え方については、東京都都市整備局ウェブサイトをご覧ください。

出典:東京都都市整備局「定期報告が必要な特定建築物・防火設備・建築設備・昇降機等及び報告時期一覧

東京都の定期調査・報告制度|所管特定行政庁

東京都では、建物の所在地や規模によって検査・報告の所管が異なるため、注意が必要です。23特別区、多摩区域、島嶼区域について、建築物の所管を紹介します。

23特別区
敷地内に延べ面積が1万㎡を超える建築物がある場合には、東京都都市整備局市街地建築部が所管します。それ以外の場合は、それぞれの区が所管します。
多摩区域
建物の規模に関係なく、下記11市はそれぞれの市が所管します。

八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、町田市、日野市、国分寺市、西東京市、小平市

上記以外の市町村は、東京都多摩建築指導事務所が所管します。
島嶼区域
島嶼は、東京都都市整備局市街地建築部が所管します。

本記事で紹介した東京都の調査ルールが適用されるのは、23特別区の敷地内にある延べ面積が1万㎡を超える建築物と、島嶼区域にある建築物のみです。
建築物等の所在地とその管轄を必ず確認したうえで、定期報告の準備を行なってください。

【東京都】全国の定期調査・検査と異なる点

定期調査・検査の報告時期・検査内容等は、特定行政庁ごとに定めるため、その指定に特色が見られます。東京都では、以下の点について注意が必要です。

  • 毎年調査・報告が必要な特定建築物定期調査
    概ね3年ごとの実施が多い特定建築物定期調査ですが、一部の建築物(劇場、映画館、地下街、大規模なホテル・店舗等)においては、毎年の調査・実施を求めています。
    ※前述の表(特定建築物定期調査の対象となる建築物と報告時期)の用途コード:11~15
  • 建築設備定期検査において給排水設備を指定
    給排水設備を指定している行政庁は稀ですが、東京都は指定しています。3年ごとの中水試験なども必要になりますので、詳しい検査の内容は下記関連記事の「(4)給水設備および排水設備」をご参照ください。

関連記事:
建築設備定期検査の重要性・検査内容 (建築基準法 第12条)

定期調査・報告の流れ

定期調査・報告は、有資格者に依頼して行います。有資格者に調査を依頼するところから報告完了後の作業までの流れは、概ね以下のとおりです。

  • 報告者(建物所有者または管理者)が、報告時期に合わせて有資格者に調査・検査を依頼する。
  • 調査者が調査・検査を行い、報告書を作成し、その結果を報告者に報告する。
  • 報告者が報告書を特定行政庁に提出する。
  • 受付機関が予備審査を行い、特定行政庁に書類を送付する。
  • 行政側で審査を行なったあと、報告者へ報告書を返却するために受付機関に書類を送付する。審査の結果によっては、報告者に対して改善等を指導する場合もある。
  • 受付機関により、報告書1部と報告済証等が報告者に送付される。
  • 報告者が報告書を保存し、報告済証の掲示等を行い、定期調査・検査報告が完了となる。

フローを見ると、複雑な手続きを行うように感じられますが、しっかりとした調査会社に依頼すれば手続きをサポートしてもらえるため、大きな手間は生じません。
建物の所有者または管理者の方は、報告時期を逃さないよう、早めに調査の手配を進めておきましょう。

定期調査・報告なら、ビューローベリタスにお任せください!

建物の定期調査・報告は、特定建築物定期調査、防火設備定期検査、建築設備定期検査、昇降機等定期検査の4つに分かれています。調査や検査によって、対象となる建築物や設備、報告時期が異なるため注意が必要です。

また、調査対象や報告時期は地域によっても異なります。この記事では東京都の調査・報告の内容を紹介しましたが、他の地域に建築物を所有または管理している方は、管轄の市町村等にご確認ください。

定期調査・報告は、調査会社などに依頼して行います。
依頼先でお困りの場合は、12条点検に関して年間12,000件以上*の定期調査・報告実績をもつ、ビューローベリタスにお任せください。

定期調査・報告のお見積もりはこちらのページから無料で行えるので、ぜひお気軽にご相談ください。

*2022年1月~12月実績

page top