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定期報告制度(12条点検)とは?~法改正のポイントと国が定める対象建築物について解説~

2022/12/13

多くの人が出入りする建築物の所有者または管理者は、その設備を定期的に検査し、検査結果を特定行政庁へ報告しなければなりません。
建築基準法第12条に定められるこの検査は12条点検とも呼ばれており、平成28年には法改正も実施され、以前より検査の内容などが幅広くなっています。

今回は、定期報告制度の概要と平成28年度の法改正の内容について解説します。建物の安全性を確保するためにも、定期検査に関する知識を身につけ、確実に検査を実施してください。

定期報告(12条点検)とは

デパートやホテル、病院など、不特定多数の人が利用する施設では、建物の老朽化や避難設備の不備、建築設備の作動不良などにより、大事故が発生するリスクがあります。
これらの事故を未然に防ぎ、建築物の安全性や適法性を確保するために行われるのが、定期報告です。
建築基準法では、専門の技術者が建築物やその設備を定期的に調査・検査し、特定行政庁に報告することを義務としています。検査の内容や時期を知り、建物の適切な管理に努めてください。

実施すべき「定期調査・検査報告」とは、特定建築物定期調査、防火設備定期検査、建築設備定期検査、昇降機等定期検査の4つです。これら4つの定期検査は、建築基準法第12条に定められていることから、「12条点検」とも呼ばれます。
12条点検について、調査・検査ごとにそれぞれ簡単に解説します。

特定建築物定期調査

特定建築物定期調査では、建物の劣化損傷や防災上の問題点について、幅広く調査を実施します。調査対象となる建築物や報告を行うべき時期は、建築物の用途や規模、管轄する特定行政庁によって異なるため注意が必要です。

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防火設備定期検査

防火設備定期検査では、火災による被害を最小限にするために必要な、防火設備の設置状況と作動状況を確認します。検査の対象となるのは、防火扉や防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャーなどの防火設備です。

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建築設備定期検査

建築設備定期検査は、建築物に付帯する設備の不具合による事故を防止することを目的としています。検査対象は、換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水設備および排水設備です。

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昇降機等定期検査

昇降機等定期検査では、エレベーターやエスカレーター、小荷物専用昇降機などを対象に、安全性を検査します。国などが所有または管理する建築物を除く、すべての建築物の昇降機等に対して検査が義務付けられています。

【その他の調査】

実施すべき「定期調査・検査報告」に建築物・防火設備・建築設備・昇降機を挙げましたが、定期報告(12条点検)においては、外壁の全面打診等調査(10年毎)も義務化されています。外壁タイル等の建築物においては、併せてご確認ください。

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平成28年6月1日、建築基準法の定期報告制度が改正された背景

平成24年から平成25年にかけて、福山市ホテル火災、長崎市グループホーム火災、福岡市診療所火災など、多数の死者が出る大規模な火災事故が立て続けに発生しました。これらの火災現場で共通していたのが、建築物および建築設備が適法な状態で管理されていなかったことです。

福山市の火災では、消防用設備等の点検報告がされていなかったほか、消防訓練の未実施や、屋内消火栓の一部不備が指摘されています。また、長崎市の火災では消防訓練が十分に実施されておらず、防火区画が建築基準に不適合でした。福岡市の火災では、設置すべき排煙設備が未設置で、防火設備の不適切な管理状況だったなどの問題点がありました。

適切な設備の設置や日頃の消防訓練を実施しなかったことが被害の拡大につながり、こうした事態を受け建築基準法が改正され、平成28年6月1日に施行されました。

次は、建築基準法の定期報告制度改正のポイントを解説します。

建築基準法における定期報告制度改正のポイント【平成28年6月1日】

平成28年に施行された改正建築基準法により、定期報告制度の内容が一部変更となりました。
変更のポイントは以下の2点です。改正前と改正後の制度を比較して、内容を確認してください。

「報告対象の建築物等」が追加された

改正前 改正後

・特定行政庁が指定する
① 建築物
② 建築設備
③ 昇降機等

・国が政令で指定する
① 建築物
② 建築設備
③ 昇降機等
④ 防火設備

・特定行政庁が指定する
① 建築物
② 建築設備
③ 昇降機
④ 防火設備

これまで定期報告制度の対象となっていた建築物は、特定行政庁が指定するものに限られていましたが、改正により、新たに国が政令で指定する建築物等が報告対象に加えられました。
建築物の所有者または管理者は、管轄の特定行政庁の指定と国の政令による指定の両方を確認し対応してください。

建築物等の調査・検査を担当する「専門技術を有する資格者」が追加された

改正前 改正後
専門技術を有する資格者
・一級建築士
・二級建築士
・法定講習の修了者
(特殊建築物等調査資格者・昇降機検査資格者・建築設備検査資格者)
専門技術を有する資格者
・一級建築士
・二級建築士
・法定講習の修了者で国土交通大臣から資格者証の交付を受けた者
(特定建築物調査員・昇降機等検査員・建築設備検査員・防火設備検査員)

法改正により、定期調査・報告を行なう資格者が新たに設けられました。資格者の監督などは国が行い、調査等に関して不誠実な行為をしたときは、資格者証を返納させるなどの罰則も設けられています。

【政令指定】定期報告の対象となる建築物・防火設備・昇降機

政令指定の定期報告の対象となる建築物・防火設備・昇降機について、対象となる建築物等の用途や位置、規模などを紹介します。なお、建築設備については、政令での指定はありません。

また、報告時期は各特定行政庁によって異なります。特定行政庁の定めに従って、調査・報告してください。

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管轄の特定行政庁一覧をご紹介します。

定期報告の対象となる建築物・昇降機・防火設備【政令指定】
対象 対象用途(設備) 対象用途の位置・規模※2
(いずれかに該当するもの)
A.建築物※1 劇場、映画館、演芸場 ① 3階以上の階にあるもの
② 客席の床面積が200㎡以上のもの
③ 主階が1階にないもの
④ 地階にあるもの
観覧場(屋外観覧場を除く)、公会堂、集会場 ① 3階以上の階にあるもの
② 客席の床面積が200㎡以上のもの
③ 地階にあるもの
病院、有床診療所、旅館、ホテル、就寝用福祉施設【別表】 ① 3階以上の階にあるもの
② 2階の床面積が300㎡以上のもの※3
③ 地階にあるもの
体育館、博物館、美術館、図書館、ボウリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場(いずれも学校に付属するものを除く) ① 3階以上の階にあるもの
② 床面積が2,000㎡以上のもの
百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗 ① 3階以上の階にあるもの
② 2階の床面積が500㎡以上のもの
③ 床面積が3,000㎡以上のもの
④ 地階にあるもの
B.防火設備
(防火扉、防火シャッター)
・上記Aの建築物の防火設備
・病院、有床診療所または就寝用福祉施設※4の防火設備
C.昇降機 ・エレベーター
・エスカレーター
・小荷物専用昇降機(フロアタイプ)

※1 該当する用途部分が避難路のみにあるものは対象外
※2 該当する用途部分の床面積が、100㎡超のものに限る
※3 病院、有床診療所については、2階の部分に患者の収容施設があるものに限る
※4 該当する用途部分の床面積の合計が200㎡以上のもの

【別表】就寝用福祉施設の詳細
対象となる就寝用福祉施設 備考
サービス付き高齢者向け住宅 「共同住宅」「寄宿舎」「有料老人ホーム」のいずれかに該当
認知症高齢者グループホーム
障害者グループホーム
「寄宿舎」に該当
助産施設、乳児院、障害児入所施設
助産所
盲導犬訓練施設
救護施設、更生施設
老人短期入所施設
小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護の事業所 「老人短期入所施設」に該当
老人デイサービスセンター(宿泊サービスを提供するものに限る) 「老人短期入所施設に類するもの」に該当
養護老人ホーム、特別養護老人ホーム
軽費老人ホーム、有料老人ホーム
母子保健施設
障害者支援施設、福祉ホーム、障害福祉サービス(自立訓練または就労移行支援を行なう事業に限る)の事業所(利用者の就寝の用に供するものに限る)

出典:国土交通省「新たな定期報告制度の施行について

定期報告制度を守らなかった場合は罰則が科される

定期報告を怠る、または虚偽の報告をした者は、建築基準法第101条に基づいて100万円以下の罰金に処されます。建築物の所有者や管理者は定期報告のタイミングを把握し、滞ることがないよう注意してください。
また、定期報告を行なう有資格者が虚偽の報告をしたことが判明すると、資格者証の返納が命じられ、返納に応じない場合は30万円以下の過料となります。

正しく報告を行い、罰則などのトラブルを避けるためにも、信頼できる調査会社に依頼することが重要です。

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*2021年度実績

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